抄録
(±)-2-アミノ-1-フェニルエタノール((±)-APE)の置換安息香酸塩のラセミ体構造を調べ,ラセミ混合物であるものに対して優先晶出法による光学分割の可能性について検討した。APEとの塩形成に使用した安息香酸類は,安息香酸と,2-Xミノ-,3-アミノ-,3-メチル-,4-メチル-,2-クロロ-,4-クロロ-,2-ニトローおよび3-ニトロ安息香酸である。これらの(±)-ならびに(-)-塩の融解エンタルピーの比較,ラセミ化合物の生成自由エネルギーおよび融点の二成分系状態図から,(±)-APEの3-アミノ安息香酸塩((±)-3-AB塩)がラセミ混合物であり,それ以外の塩はすべてラセミ化合物を形成していることがわかった。そこで,(±)-3-AB塩をテトラヒドロフラン中,10℃ で,ラセミ体溶液の過飽和度を150,または200%,種晶量を0.01または0.029にして光学分割した。その結果,過飽和度200%,種晶量0.029のとき,光学純度が約90%の(-)-3-AB塩を分割率約60%で得ることができた。