日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
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ベンズアルデヒドのCannizzaro反応におよぼず界面活性剤の効果
佐伯 幸民根来 健二一安 哲
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1985 年 1985 巻 5 号 p. 931-937

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抄録

ベンズアルデヒドのCannizzaro反応を,電荷の異なる硫酸ドデシルナトリウム(SDS) ,ドデシルトリメチルアンモニウム=クロリド(DTAC),ヘキサデシルトリメチルアンモニウム=クロリド(CTAC),ポリエチレングリコール=モノオレイル=エーテル(POMOE)およびポリエチレングリコール=p-ノニルフェニル=エーテル(PONPE)の存在下で40℃,50℃,60℃で行ない,反応の動力学的および熱力学的諸量を求めた。また,ゲル〓過法を用いて,基質,アル力リおよび生成物のミセル相とバルク相問の分配係数を求めて,ミセルによる濃縮効果を検討した。活性剤の電荷型の相異により,反応の速度は促進または遅延を示し,Ea,ln PZは低下するが,ΔFaは変化しない。また,ベンズアルデヒドはミセル中に30~100倍濃縮されるが,NaOHはSDS,PONPEでは7~10倍にしか濃縮されず,生成物であるPhCOONaは非イオンミセルに特異的に濃縮されることがわかった。ミセル相中での反応速度はパルク相中での反応速度にくらべて,かなり小となり,負の効果を示すことがわかった。これらのことから,反応への効果はミセルの静電荷と濃縮効果に基因するが,Eaへの効果は反応に関係する分子のミセル相中への“とりこみ” のための自由度の減少によるΔSaへの寄与として説明出来る。

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