日本化学会誌(化学と工業化学)
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チタン-酸素二重イオン注入による鉄基板の表層改質着色と防食
岡部 芳雄高橋 勝緒岩木 正哉吉田 清太
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1985 年 1985 巻 6 号 p. 1087-1096

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抄録

Ti+注入した鉄およびTi+-O+二重イオン注入した鉄の表層組成,電気化学的性質(耐食性)ならびにそれによる着色効果について検討した。イオン注入は,15OkeVのチタンを3×1016~1×1017Ti+/cm2で,また,Ti+注入後の酸素注入は35または50keV,1×l016~2×1017O+/cm2で行なった。注入したチタンの濃度-深さ分布を二次イオン質量分析法によって測定し,また,チタンの酸化状態をX線光電子分光法により測定した。各種注入鉄の電気化学的性質は,注入鉄を作用電極として,サイクリックボルタンメトリーにより測定し,鉄のアノード溶解におよぼすイオン注入効果を検討した。得られた結果は以下のとおりである。1)Ti+注入およびTi+-O+二重イオン注入により高精度な組成制御ができる。2)注入したチタンの酸化状態もまた制御できる。3)Ti+注入やTi+-O+二重イオン注入により鉄電極のアノード溶解がいちじるしく抑剃される。4)Ti+-O+二重イオン注入において,酸素の注入量が1×1017O+/cm2以上になると,鉄の選択的溶出が生じ,電解後,チタン酸化物の濃度が表面でいちじるしく高くなり,その表面は着色される。5)この着色表面は,純鉄と比較し,電気化学的に不き活性である,以上から,酸素の注入量にしたがって,電気化学的性質の改善ばかりでなく,その表層を着色できることが見いだされた。

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