日本化学会誌(化学と工業化学)
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水面上メロシアニン色素単分子膜の分子会合状態の経時変化
鵜沼 豊友野 孝夫
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1987 年 1987 巻 11 号 p. 2101-2107

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抄録

水面上に展開した100%メロシアニン色素の単分子膜の吸奴スペクトルの時間変化を測定することにより,水面上における分子会合状態の時間変化を直接とらえた。J会合体は色素の水面上への展開直後に生成し,時間とともに徐々に崩壊してタイマーとなることがわかった。下層液のpHを低くすると,J会合体の崩壊速度が速くなることがわかった。これはCd2+イオンが色素のカルボキシル基を橋かけしてJ会合体を安定化させているためであると考えられる。J会合体の崩壊速度の温度依存性は単純ではない。J-bandのピーク高が初期の1/3以下になってからは温度が高いほど速度ははやい。しかし,初期においては,26℃に最小値がある。これは熱によるアニーリングの効果によるより安定で均一なJ会合体の生成と熱運動によるJ会合体の崩壊の競争関係によるものと考えられる。水面上での放置時間の異なるLB膜を作製しその偏光顕微鏡観察をした。J会合体は1μm弱の複屈折を示す微結晶となっていることがわかった。垂直入射および斜め入射の偏光スペクトルを測定することによって,タイマーはJ会合体よりも水面に対して立っていることがわかった。

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