日本化学会誌(化学と工業化学)
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YBa2Cu30x の熱分解挙動
南條 敦篠崎 和夫水谷 惟恭加藤 誠軌
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1989 年 1989 巻 4 号 p. 692-696

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抄録

YBa2Cu30x の相変化と熱分解を酸素, 空気, 窒素の雰囲気中で, 室温から 1200℃ までの間で熱重量分析 (TG), 急冷法により検討した。
加熱すると斜方面 YBa2Cu30xは正方晶 2Cu30x (以下, 正方晶) へと相転移する。空気中, 790~970℃ において正方晶の一部は分解して微量の BaCuO2が生成する。しかしこの領域で大部分の正方晶は安定に存在する。この現象は不十分な出発酸化物の混合と固相反応によって生じた組成の不均一な領域の生成のためと考えられる。大きな組成の変動をもった YBa2Cu30x は高温において BaCuO2 に分解する傾向がある。
さらに加熱すると, 正方晶は, 970℃ において, YBa2Cu30x, BaCuO2, 未知相に分解する。空気中, 1100℃ から急冷した試料においては未知相の量は微量であるものの, 1100℃ において, 1時間保持することによって未知相の生成量は増加し, また未知相は試料固体の表面にしみ出してきた。未知相はその生成に関して酸素分圧依存牲がある。窒素中 1100℃ から徐冷した場合は未知相が得られるのに対して, 空気中 1100℃ から徐冷した場合は未知相は得られなかった。この未知相の組成はほぼ, Y : Ba : Cu = 0.1 : 1 : 1 であり空気中, 室温で非常に不安定で短時間のうちに分解する。
YBa2Cu30x の熱分解挙動はいずれの酸素分圧下でも等しく, 分解温度は雰囲気中の酸素分圧が減るにしたがって減少する。

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