日本化学会誌(化学と工業化学)
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トリフルオロ酢酸中における[n]フェロセノファン-6-オールおよび-7-オールの1H-NMRスペクトルと反応フェロセノファンの6-位カルボカチオンの生成
久留 正雄山川 浩司
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1989 年 1989 巻 9 号 p. 1601-1608

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抄録

それぞれ数種の[3]フェロセノファン-6-オール〔3〕,〔4〕フェロセノファン-6-オール〔4〕および[4]ユフェロセノファン-7-オール〔5〕を合成し,トリフルオロ酢酸-d(TFA-4)中における1H -NMRスペクトルを測定した。測定溶液を加水分解して得られる化合物の構造も調べた。〔3〕と〔4〕では,6-位プロトンまたは6-位メチル基の低磁場シフト,シクロペンタジエニル環プロトンの分裂と結合定数,6-位プロトンと環プロトンの遠隔スピン結合などから,TFA-d中で母体アルコ_ルの立体構造を保持した安定な力空ボカチオンを生成することが判明した。〔5〕のうち第三級アルコールはTFA-4中で1,2-ヒドリドシフトを起こし,カチオン中心が7-位から餅位に転位して,相当する6-位カルボカチオンとなって安定化することが明らかとなった。これは,1H-NMR澱定溶液の加水分解生成物ぶ対慈する6-位アルコールであり,しかもこれをふたたびTFA-dに溶解すると〔5〕から得ら雛スペクトルと一致すること証明された。〔5〕のうち第二アルコールはTFA-dで完全なカルボカチオンにはならないが,母体アルコールとぽ異なる化学種が生成しており,フェロセン核による安定化が示唆された。

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