日本化学会誌(化学と工業化学)
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アルキル化β-シクロデキストリンを開始剤キャリヤーとする水溶性モノマーの油溶性開始剤による二相系(水相一有機相)ラジカル重合
国枝 紀夫漁士 弘人山形 一雄木下 雅悦
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1989 年 1989 巻 9 号 p. 1620-1627

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抄録

水相-有機相(クロロホルムーリグゴイン,容積比1:4)からなる二相系でのアクリルアミド(AAm),アクリル醗メタクリル酸,それにスチレソスルホン酸ナトリウムなどの水溶性モノマーの油溶性ラジカル開始剤による重合において,親油性のアルキル化β-シクロデキストリン,ヘプタキス(2,3,6-O-トリアルキル)-β-シクロデキストリン[アルキル基:(CH2)CH3,n=0~11]をこの系に添加することによりこの重合が大きく促進されることを見いだした。ラジカ開始剤としてはアゾ系開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル,2,2´-アゾビス(2,4-ジメチルペンタンニトリル),それに1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル),過酸化物開始剤として過酸化ベンゾイル(BPO)を用いたが,いずれの場合もアルキル化β-シクロデキストリンの顕薯な添加効果がみられた。たとえぱAAmのBPOによる二相系重合においてn=11のアルキル化,β-シクロデキスリンのBPOに対して約2倍モル量の添加は無添加の場合にくらべて10.6倍高い重合率を示した。この二相系重合の機構を解明するため,これらアルキル化β-シクロデキストリン存在下におけるBPOの二相間の分配係数,それにBPOの分解速度定数,BPOとこれら化合物との包接化合物の解離平衡定数などの測定を行った結果,この重合においてアルキル化β-シクロデキストリンの親油性と開始剤に対する包接能が重要な役割を果しており,これら化合物が開始剤キャリヤーとして作用していることが明らかになった。さらにアルキル鎖の長さと開始剤の有機相から水相への輸送能,および重合効率との関連を検討した。

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