日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
白根硫黄鉱山からの酸性坑排水の遅沢川水系河川に与える影響
大井 隆夫小坂 知子平塚 庸治山崎 智廣垣花 秀武小坂 丈予
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 1991 巻 5 号 p. 478-483

詳細
抄録

1970年ころ相次いで閉山された草津白根山地域の硫黄鉱山廃坑からは今なお坑排水が流出している。一=般にこれら坑排水は強酸性であり,下流の河川に悪影響を与えている。著者らは特に白根鉱山について,その坑排水の下流河廻,すなわち遅沢川水系河川,への影響を1975年以降調査している0白根鉱山廃水はpH=1.68~1.84の強酸性であり,陽イオンでは鉄,アルミニウムに富み,陰イオンでは硫酸イオンが多い。硫酸イオン濃度にくらべて塩化物イオン濃度が異常に低いこと,水温が低いことなどから・草津白根山地域の酸性温泉水とは異なり,坑排水は同地域の火山活動の影響を直接的には受けていないことが示唆される。遅沢川河川の水質は,白根鉱山廃水の流入前までは良質であり,pHもほぼ中性である。しかし,坑排水の流入により水質は急激に悪化し,下流にいくにしたがい徐々に改善するものの,坑排水流入点下流約9kmの吾妻川にいたるまでpHは3以下である。硫酸イオンおよび鉄濃度の経年変化をみると,両成分とも減少あるいは一定の傾向を示し,今後これら濃度が増加する可能性は小さい。pHも低下する兆候は見いだせない。しかし強酸性坑排水の影響は依然として強く続いており,今後も遅沢川水系の水質を調査・監視していく必要がある。

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© The Chemical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top