日本化学会誌(化学と工業化学)
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湖沼水中における一重項酸素の光化学的生成
河口 英樹
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1991 年 1991 巻 5 号 p. 520-525

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抄録

福井市近郊の富栄養化の進行している北潟湖および貧栄養の武周ケ池の試水について,2,5-ジメチルフランをトラップ剤とする方法を用いて一重項酸素の光化学的生成を調べた。模擬太陽光照射下における一重項酸素定常状態濃度([1O2]ss)の試水表面における値は北潟湖で(2.1~6.3)×10-14mol・dm-3,武周ケ池で(2.1~4.0)×10-14.・dm-3であり,両湖沼とも夏期に極大を示した。両湖沼のCODと[1O2]ssの間には,相関関係数0.90の相関がみられたがクロロフィルa濃度との間には相関がみられなかった。北潟湖では一重項酸素生成に対して分子量1万以下の溶存有機物が85%以上の寄与を示すのに鰐して,武周ケ池では分子量1万以上の溶存有機物の寄与が40%以上であった。この結果を溶存有機物の分子量分析と関連づけて考察した。一重項酸素生成の量子取率は北潟湖の場合0。009~0.018,武周ケ池では0.002~0.010の範囲にあるとともに,長波長側で小さくなる傾向がみられた。最後に上記の結果を用い,水圏汚染物質の例としてクロロフェノール類を取り上げ,一重項酸素による分解の半減期を求めた。北潟湖の7月の深さ1mの表層における2-クロロフェノールの半減期は約30時間であり,ポリクロロフェノールの半減期は70時間以上であった。

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