1991 年 1991 巻 5 号 p. 612-617
環境保護の観点から水溶液中の水銀(II)の濃縮について検討を行った。この濃縮すなわち能動輸送は,原水相,ハロゲン化物塩を含む受水相,およびこの両水相を分離するフィルター含浸液膜からなる系を組み立てることによって達成された。液膜としては,液状宋リブタジエソ(LPB),エポキシ化LPB(LE),および含硫LPB誘導体(LSMe)とo-ニトロフェニル=オクチル=エーテルとの混合物が水銀(II)の選択的能動輸送能を示すことがわかった。LPB中の不飽和結合,LE中のエポキシ環,およびLSMe中のスルフィド結合はいずれも,液膜中の活性要素として水銀(II)と相互作用をもち,原相から液膜への水銀(皿)の吸収を誘起するものと考えられる。液膜から受相へ放出された水銀(II)はハロゲン化物イオンと平衡下に錯化し,液膜と相互作用をしない不活性なHgX42-となる。この相互作用の消滅が,液膜への水銀(II)の再吸収を抑え,その能動輸送能の発現に寄与している。検討したLPB誘導体の内,含硫誘導体特にスルフィド結合濃度の高いLSMe-bが最も優れた水銀(II)の選択的能動輸送能を示した。
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