日本化学会誌(化学と工業化学)
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富山県における酸性雨の化学
鳥山 成一島田 博之荒川 久雄高田 忠幸藤平蔵 芳光
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1991 年 1991 巻 5 号 p. 682-689

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抄録

日本海沿岸地域で降雪の多い富山県で,1987年から1989年の3年間にわたって自動採取装置による降雨と濾過式採取法による1週聞降雨について調査した。自動式および演過式の3年間の平均pHはそれぞれ4.6と4.7で,その差は0.1の違いであった。降水成分の海塩寄与は冬型の季節風の影響で68~70%を占め極めて大きく,海塩成分を除いた主要5成分の(H++NH4++nss-Ca2+)/(nss-SO42-+NO3-)当量比は自動式1.04濾過式1.02でイオンバランスはよく取れていた。主要5成分(H+,NH4+ ,nss-Ca2+,nss-SO42-,NO3-)の年平均沈着量については自動式と濾過式はそれぞれ0.053と0.044g・m-2・y-1, 0.67と0.83g・m-2・y-1, 0.52と0.73g・m-2・y-1, 4.0と4.3g・m-2,y-1 ,1.8と2.2g・m-2・y-1であった。重回帰分析を行ったところH+を高める因子は,nss-SO42-,NO3-でH+を中和する因子は,nss-Ca2+,NH4+であった。主成分分析を行ったところ(1)Na+, Cl-, Mg2+, K+の海塩由来成分と,(2)nss-SO42-,NH4+,NO3-のようなエーロゾル中の二次生成粒子との関係の深い成分で,(3)その他にH+,nss-Ca2+のいずれにも属さない成分に分類された。

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