日本化学会誌(化学と工業化学)
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山形県米沢市における降水の化学的特徴
志田 惇一小沢 正宣内海 孝裕
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1992 年 1992 巻 8 号 p. 862-867

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抄録

山形県米沢市における2年間の降水[1989年5月から1990年2月(試料1),1990年5月から1991年2月(試料II)]の化学成分を分析し,季節変動や気象条件とくに降雪に対する風速の影響などを考慮に入れて,pH,電気伝導率(EC)および溶存イオン種(Na+,K+,NH4+,Ca2+,Mg2+,C1-,NO3-およびSO42-)との相互関係について解析し,さらに,それぞれのデータを全国の平均値と比較した。試料1および試料0の降雨と降雪のpHの平均値は,それぞれ4.7と4.7および4.8と4.7であった。もっとも低いpHの値は降雨で3.97,降雪で4.14であった。降雪のpHの値は降雨に比べて低い値に偏っており,その範囲もpHの単位で約1以内であった。降雨の採取日ごとの降雨量とpHの値との関係から,台風などの強風による大気の浄化作用効果が認められた。溶存イオン種の各二成分間の相関関係は降雨ではNa+-Mg2+,降雪ではNa+-Cl-がもっとも強かった。Na+とCl謄は海塩からの寄与が高く,とくに,冬期間の季節風の平均速度が高いほど海塩を取り込んだ雪が日本海方面から輸送されてくることが推測された。米沢市の降雨は全国のバックグラウンドレベルにあるが,NH4-とNO3-の濃度が2~3倍高くなっている。

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