日本化学会誌(化学と工業化学)
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高感度熱分析法によるステアリン酸カドミウムLB膜の相転移の解析
野牧 辰夫山中 明子佐々木 秀幸内藤 勝之
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1993 年 1993 巻 12 号 p. 1349-1352

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抄録

高感度示差走査熱量測定法(DSC)により,ステアリン酸カドミウムLB膜の熱挙動について検討を行った。LB膜は金蒸着したシリコンウエハ基板上に4~21層累積したOLB膜と金蒸着膜をいっしょにはく離する下地膜はく離法を用いて試料を作製し,DSC測定した。ステアリン酸カドミウムLB膜の相転移温度はバルク結晶の相転移より約15℃ 高いことがわかった。21層の累積膜の相転移ではi低温側にサブピークが出現するが,このサプピークは分子配向の乱れに関係していることが高感度赤外反射吸収法(IRRAS)の解析から明らかになった。また,相転移温度以上に加熱し,一定速度で冷却したLB膜の相転移では低温側に新たにピークが出現した。低温側のピークは分子規則性の消滅によって新たに出現したピークと考えられる。加熱後も高温側のピークが存在することは,LBが加熱後も完全にランダムな分子集合状態にならず,分子規則性が残存されることを示唆している。

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