日本化学会誌(化学と工業化学)
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量子化学的反応性指数に基づくC60Br6の生成機構の検討
大前 貴之
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1995 年 1995 巻 3 号 p. 169-176

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抄録

C60の臭素化反応について,量子化学的反応性指数(とくに電子密度とフロンティア電子密度)に基づいて研究した.ここで,C60からC60からC60の反応性はその分子表面に分布していると考えられている三次元の共役系によって支配されていると仮定し,各反応性指数は単純Httckel法を用いて計算した.また臭素化の反応モデルとしては,平面共役系の臭素化をよく記述するのと同様のものを用いた.この結果,C60からC60Br6を生成するいくつかの反応経路が得られた.しかし,従来考えられていたシクロペソタジエニリウムカチオソ様の共役構造を持つ化学種を経由するような反応経路は得られなかった.今回得られた反応経路は,より対称性の低い共役構造を持った中間体を経由するか,またはシクロペソタジエニドアニオン様の共役構造を有する中間体を経由するようなものであった.また,ここで用いた反応モデルではC60Br8やC60Br24を生成する合理的な反応経路は得られなかった.さらに,C60Br6の生成経路が,臭素が6個付加した段階で停止することを合理的に解釈するには,C60からC60の臭素化がBrによって進行すると考えればよいことを初めて指摘した.

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