日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
流通式反応器を用いる水熱反応の速度論的解析-398-573Kにおけるアデノシン5'三リン酸の加水分解反応-
川村 邦男
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 1998 巻 4 号 p. 255-262

詳細
抄録
RNAの化学進化過程を調べるために, 水熱反応を速度論的に解析するための手法を開発した. 本法を構成する装置は, 送液ポンプ, 試料注入器流通式加熱反応器, 冷却および背圧管, 試料採取部からなり, 注入した試料溶液を一定流速で送液して加熱する. このとき, 一定流速下で背圧管に生じる圧力損失を背圧管の長さと管径を変えることによって調節し, 加熱反応器内部の圧力を水蒸気圧以上に保って試料を液体として保持した. 本法を用いて, アデノシン5'-三リン酸 (ATP) からヒポキサソチンまで逐次加水分解する反応を温度398-573K, 時間0.37-140sの範囲で追跡することができ, 各過程の速度定数を速度解析プログラムSIMFITを用いて計算した. 加熱反応器に用いる配管材料としてポリ (テトラフルオロエチレン) (PTFE) およびステンレス鋼 (SUS316) 製配管を検討した結果, 両者の結果は良く一致した. 本法を用いて決定したATPおよびアデノシンの加水分解反応の半減期は, ATP(0.31s, 473K)およびアデノシン (0.42s ,573K) であった. この方法によって, RNAの化学進化のモデル反応を高温水中で直接追跡できる可能性が開かれた.
著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© The Chemical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top