健康医学
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脂肪肝と死の四重奏との関係の検討
加藤 裕美佳吉田 徹長尾 和義二村 良博
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2003 年 18 巻 3 号 p. 354-375

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抄録

過栄養,運動不足,ストレス,飲酒,喫煙などの習慣により生じる生活習慣病も,若い世代から増加する傾向にあり,動脈硬化性疾患を発症する危険因子をいくつか合併していることも多い。そこで,死の四重奏(肥満,高血圧,高脂血症,耐糖能異常)と脂肪肝の頻度や関係を,18歳から77歳の男性707人,女性284人の合計991人において検討した。脂肪肝を認める症例は,(1)高度の肥満を合併する割合が高い。(2)中性脂肪高値,高コレステロール血症,低HDL血症の傾向である。(3)耐糖能異常が多い。(4)高血圧の割合も高い。(5)高尿酸血症も多い。そして,死の四重奏を合併している割合は,4項目7人,2.5%,3項目25人,8.9%,2項目77人,27.3%,1項目139人,49.3%,なし34人,12.1%であり,脂肪肝を認めない症例では,4項目0人,3項目12人,1.7%,2項目67人,9.4%,1項目357人,50.4%,なし273人,38.5%であった。このように,脂肪肝を認める症例では,危険因子を合併している割合が高かった。脂肪肝を,生活習慣病への初期段階の状態と判断し,危険因子の一つに加え,脂肪肝,肥満,脂質代謝異常,高血圧,耐糖能異常は,元気に明るく楽しく生きていくための負の因子であり,合併する因子数が多いほど,生活習慣病や動脈硬化性疾患が生じやすい。また,飲酒歴がない脂肪肝の場合は,非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:nonalcoholicsteatohepatitis)の可能性もあり注意を要する。

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© 公益社団法人 日本人間ドック学会
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