抄録
本稿は、非関税障壁の1つである規格及び技術規制をとりあげ、これらがアジア域内で標準化されたときの経済効果に関する分析を行ったものである。分析手法としては、既存のGTAPモデルを用い、静学と動学両面からの政策シミュレーションを行っている。静学分析では、アジア域内の規格や技術を標準化することによって、日本、韓国、中国、ASEANのGDPは、それぞれ、0.10%、0.33%、0.41%、0.26%増加するという推計結果が出された。これは、金額では、日本では45億ドル、アジア全体では148億ドルにのぼる。標準化に向けた複数の各国間協調シナリオを想定した動学分析では、できるだけ早期に標準化を進めることが、アジアの各国にとってはより大きなマクロ経済的なメリットを享受することができることが明らかとなった。特に日中韓3国については、対ASEANとよりも、3国間で先に標準化を進める方が経済的利益が大きい。アジアでは、いまだ先進国と発展途上国との格差が大きいことから、各国の産業構造を考慮した標準化政策のあり方も検討に値する。