消化器病学
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多數寄生してゐた蛔蟲症の一例
土井 次夫
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1937 年 2 巻 4 号 p. 658-669

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抄録
世界文化の進展に伴ない衛生思想普及し一般に我が國民も寄生蟲に對して注意を梯ふ様になり, 又一方各府縣に於ても各機關を通じて寄生蟲多き町村の寄生蟲駆除も盛に行はれて, 今昔を比較すれば寄生蟲保有者は甚だ減少せるものの如く思はるゝが, 大都市を除く外は必すしも然らす, 甚だ遺憾とする所である.
而して蛔蟲症は一般に民間病とも言はれて其の駆除も一般民間の手に依りて行はれ, 醫院特に大擧附屬醫院に來る者は殆ど無い. 所が最近他の二三の病院に於て蛔蟲駆除を行はれたたが蛔蟲排出せす激しき饑餓痛あり, 又糞便潜血反應陽性なるに依りて十二指腸潰瘍として治療されてゐたが何等快方に向はす十二指腸潰瘍の手術を希望して當内科に來た患者がある. 其の糞便檢査を行っ九處多數の蛔蟲卵及び鞭蟲卵と少數の十二指腸蟲卵とを見出し, 「アスカリドール」及び「マクニン」を以て駆除した所蛔蟲無慮82條, 十二指腸蟲5條, 鞭蟲3條を排泄して症状全く消失したたる例に遭遇したから之を茲に報告せんとする.
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