抄録
清化性胃及ビ十二指腸潰瘍ノ發生機轉未ダ闡明ノ域ニ達セザル以上其ノ治療法ニ就イテモ多種多様ニシテ從來之ト確實ニ保證シ得ルモノハナイ.斯カル時偶ゝ岡田教授ハ豚ノ胃粘膜濾液製劑「スチムリン」M (Stimulin-M) 及ビ豚ノ十二指腸粘膜濾液製劑「スチムリン」D (Stimulin-D) ヲ創案セラレ, 余ハ同教授指導ノ下ニ之等ノ臟器製劑ヲ胃及ビ十二指腸潰瘍患者ニ注射シテ, 其ノ臨牀的ニ及ボス效果ヲ檢索シテ次ノ如キ成績ヲ得タリ.
即チ直接成績ニ於テ「スチムリン」Mハ特ニ胃潰瘍ニ對シテ有效ニシテ其ノ治癒率ハ77.8%, 「スチムリン」Dハ特ニ十二指腸潰瘍ニ對シテ有敷ニシテ其ノ治癒率ハ85.7%ナリ
又遠隔成績ニ就イテハ, 本治療後日尚淺ケレドモ治癒セシモノニシテ治療終了後6箇月以上經過セシモノニ就イテ調査セシニ, 再發セザリシモノハ胃潰瘍患者ニシテ「スチムリン」Mヲ注射セシモノハ87.5%, 十二指腸潰瘍愚者ニシテ「スチムリン」Dヲ注射セシモノハ55.6%ナリキ.
而シテ自覺的竝ビニ他覺的各症状ハ大多數ニ於テ10囘以下ノ注射ニテ消失或ハ輕減セリ.
胃液所見ニ關シテハ「スチムリン」M及ビ「スチムリン」Dノ如何ヲ問ハズ胃前液量及ビ前液酸度竝ビニ胃後液酸度曲線及ビ全胃液酸度ハ小數例ニ於テ變化アルモ, 大多數ハ治療前後ニ於テ變化ナク何等影響ヲ及ボサザル如シ.
又血液所見ニ就イテモ「スチムリン」M及ビ「スチムリン」Dノ如何ヲ問ハズ赤血球・血色素量・色素係數・白血球數ハ治療前後ニ於テ小數例ヲ除ク外ハ増減ナク, 唯血液像ニ於テ淋巴球ノ比較的増加ヲ來セルモノ比較的多シ.
