2019 年 23 巻 1 号 p. 11-21
[目的]
入院中の双胎妊婦へのケアについて助産師がどのように認識しているかを明らかにすることを目的とした.
[方法]
総合周産期母子医療センター2施設で勤務する,助産師習熟段階レベルⅢを認証された助産師9名を対象に半構造化面接を行い,質的帰納的に内容の分析をした.香川大学医学部倫理委員会の承認後に実施した.
[結果]
対象者9名の平均年齢は39.0歳,平均助産師経験年数は12.4年.分析結果より9カテゴリーが抽出された.助産師は【双胎妊婦は急変リスクが高いことを念頭におく】を意識し,【双胎妊婦とまず信頼関係を築く】ことを重要と考えていた.そして,助産師は【二児の児心音を短時間で正確に聴取することを最優先する】,【双胎妊婦は不快症状が強く現れやすいため意識して安楽な生活を工夫する】等,安楽に過ごす入院生活の重要性を認識していた.また,【双胎妊婦が分娩経過を受け止めることが大事】であると考え,個別的に分娩経過を説明していた.更に,【双胎児への愛着を促すことを常に意識している】,【双子の育児をイメージ出来ることを大切にする】の思いがあり,妊娠中から産後の育児を見据えて双胎妊婦と家族に働きかけていた.更に,助産師はこれらのケアに【十分介入出来ていないので満点をつけることはない】が,【双胎妊娠の思いを受け止め,頑張りを認めて全力で寄り添いたい】を合わせて認識していた.
[考察]
助産師は双胎妊婦特有の急変リスクに伴う身体的・精神的負担を考慮して,安全・安楽な入院生活の重要性,および双胎の分娩経過と双子育児がイメージできる重要性を認識していた.そして,助産師は自己のケアに対して十分関われていないが,全力で寄り添いたいという目標を掲げていた.
[結論]
助産師は双胎妊婦へのケアに対して十分関われていないが,全力で寄り添いたいと認識していた.
[Aim] To identify midwives' recognition of in-patient care for pregnant women with twins.
[Methods] The data were obtained by semi-structured interviews with 9 midwives from 2 Perinatal Medical Centers, who were certified with Level III competency for midwifery practice. They were analyzed using a qualitative and inductive approach. This study was conducted with the approval of the ethics committee of Kagawa University, Faculty of Medicine.
[Results] The mean age of the 9 subjects was 39.0 years old, the mean years of work experience as a midwife was 12.4 years, and 9 categories were extracted by analyzing the data. The midwives placed importance on [considering a higher risk of acute deterioration in twin pregnancy] and [establishing a trusting relationship with women pregnant with twins]. They also recognized the importance of comfortable hospitalization by [giving top priority to check to 2 heartbeats quickly and accurately] [making them feel at ease since they experience more marked physical discomfort]. Furthermore, they also encouraged the women and their families to focus on the care of their coming twins by helping them [acknowledge the process of giving birth to twins], [stay mindful by promoting the women's affection toward their twin babies], and [envision taking care of their twin babies]. Concerning their midwifery care, they responded that [they were not sure if their interventions were satisfactory], but they[wanted to do their best to support them by acknowledging their feelings and efforts].
[Discussion] The midwives recognized the importance of comfortable hospitalization, helping pregnant women acknowledge the process of giving birth to twins and envision taking care of their twin babies, in consideration of a higher risk of acute deterioration in twin pregnancy.
[Conclusions] Midwives felt that they were not sufficiently engaged in care for women pregnant with twins, and they wanted to make every support to them.
近年,ハイリスク妊娠が増加している1)ことに加え,産婦人科医の不足2)が問題となっており,助産師の専門性を発揮することが必要とされている.日本看護協会が公表した助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー)3)の「レベルⅢ」の認証を受けることで助産実践能力が一定の水準に達していることが認証され,助産実践の質の向上に貢献することが出来るとされている.レベルⅢで習得すべき知識として,「ハイリスク妊娠・分娩・産褥に関するケア」と示されており,助産師は,正常の妊婦だけではなくハイリスク妊婦に対しても助産師の知識と技術を用いてケアすることが求められていると言える.
双胎妊娠はハイリスク妊娠に分類され,多くは妊娠中からの医療管理が必要となる.また,双胎の出生率に関しては,我が国の出生数は減少傾向となっているのに対して2),不妊治療の一般化と高度化により双胎の出生率は増加していることが明らかとなっている4),5)ことから,相対的に双胎の出産数は増加しており,今後も増加することが予測される.
また,これまでの研究から双胎妊婦は単胎妊婦よりも妊娠期のストレスや不安が大きいこと6),7),8)や,単胎児家庭の母親に比べ双胎児家庭の母親は,疲労感が強いこと9)が明らかとなっている.更に,多胎家庭は単胎家庭に比べ,虐待死の発生頻度が4~5倍高いことが報告されている10).妊娠中から産後の育児までを総合的に捉えてケアをする助産師は,双胎妊婦の特性を捉えて関わっていく必要があると考えるが,病棟勤務助産師に調査した結果,ハイリスク妊婦に対するケアの到達度は「少しできる」~「まあまあできる」程度であったことが明らかとなっていた11).そこで,入院中の双胎妊婦に対する助産師の看護について文献検索を行ったが,双胎妊婦のストレスに焦点をあてたもののみであり,助産師の双胎妊婦のケアに焦点をあてて報告されたものはなかった.
入院中の双胎妊婦へのケアについて助産師がどのように認識しているかを明らかにすることである.
:日本助産師会は「助産師の声明・綱領」12)でケアを「助産師が,その技である手技や言葉を用いて,利用者の心身の安全・快適さを保つために行う行為」としている.また,山本13)は,ケアを「助産師が助産外来の保健指導時に行う健康診査や検査の結果と聴取した情報をもとになされる日常生活指導や知識の普及の援助行動,支持的行動」と定義している.よって本研究において双胎妊婦に対するケアは「双胎妊婦の心身の安全・快適さを保つために行う行為であり,日常生活指導や知識の普及の援助行動,支持的行動」と定義する.
2) 認識:広辞苑14)によると,「物事を見定め,その意味を理解すること」とされている.また,大辞林15)では「ある物事を知り,その本質・意義等を理解すること.またそういう心の働き」とされている.したがって,本研究では「双胎妊婦やケアについて考えることや感じること」と定義する.
2. 研究方法半構造化面接法による質的帰納的記述研究である.質的帰納的方法で行うことにより,助産師の認識の理解により近づくことができ,助産師の語りや行動が指し示す意図や目的の理解に繋がると考え分析方法として用いた.
3. 研究対象者および選定基準A県内の総合周産期母子医療センターを有する2施設で,助産臨床経験が7年以上であり,助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー)レベルⅢを認証されている助産師9名とした.
対象の選定基準は,入院中の双胎妊婦をプライマリーナースとして担当する病棟助産師とし,所属部署は,産科病棟,産婦人科病棟または母体胎児集中治療室(MFICU)に限定し,現在助産業務に従事する助産師とし,外来勤務のみの助産師,また現在看護師長にあるものは直接的に入院中の双胎妊婦のケアに関わらないため除外した.研究対象施設は,総合周産期母子医療センターを設置する施設とした.
4. 対象者の選定方法研究協力施設の看護部長,看護師長または病棟責任者に対し,看護研究協力の依頼文書,研究説明書,研究同意書を郵送し,研究協力を依頼した.研究の同意が得られた後,関連部署の看護師長または病棟責任者に,研究対象に該当する助産師の推薦を得た.
5. 調査方法調査期間は平成29年6月から9月である.基本属性はフェイスシートを作成し,情報を得た後,インタビューガイドに基づいた半構造化面接を行った.インタビューの所要時間は40~60分程度とした.また,インタビューは,対象者の同意を得て,ICレコーダーに録音した.
6. 調査内容基本属性(年齢,助産師としての臨床経験年数,出産経験の有無,プライマリーナースとして双胎妊婦を受け持った件数)と就業状況(勤務形態,助産外来での指導経験の有無)については,フェイスシートへの記入を依頼した.
またインタビューは,入院中の双胎妊婦への関わりに対し助産師が抱く自身の心の状態について感じている内容に対するインタビューを行った.インタビュー内容はインタビューガイドに基づき,入院中の双胎妊婦への関わりに対して単胎妊婦と比較して心掛けていること,双胎妊婦に対する自己のケアについて悩んだことや大事にしていること,感じていることである.
7. データの分析方法質的帰納的に内容の分析を行った.まずインタビュー内容を対象者ごとに丁寧に聞き取り,逐語録化した.対象者に,逐語録の内容の確認を行い,データの正確性を図った.次に,逐語録の内容の文脈を壊さないように文を整理した.研究対象者ごとにデータを丁寧に読み込み,文脈的に意味のある文節で区切り,1つの意味になるように切片化した.更に文脈中に語られた意味や表現を検討しコード化した.コードを文脈の意味の類似性に基づいて分類し,その内容を表すように要約しサブカテゴリー化し,サブカテゴリーの意味の内容を損なわないように抽象度をあげ,カテゴリー化した.
また,研究者によってかかるバイアスを最小にするためにインタビューガイドを作成した.また,本研究における真実性の確保として,HollowayとWheeler16)の示すGubaとLincolnの質的研究を効果的に評価する明解性,信用可能性,移転可能性,確認可能性に基づき確認を行った.対象者ごとに大学院生と大学院修了生間でディスカッションし,研究過程を明確に記述するように努めた.データの比較検討のプロセスで気づきを記述し,分析の妥当性についてディスカッションや指導教員にスーパーバイズを受けたことを記録に残し,研究遂行の証拠とした.
8. 倫理的配慮香川大学医学部倫理委員会の審議を得て,承認後実施した(受付番号29-025).研究責任者が対象者に対し,研究の目的及び方法,倫理的配慮について口頭と文書で説明を行い,同意書にて研究参加の同意を得た.また,研究に同意する意志を確認後,調査途中であっても中断,中止することが可能である旨を説明した.
インタビューの協力を得られた助産師9名を分析対象者とした.対象者の平均年齢は39.0(±7.66)歳であった.助産師の経験年数は平均12.4(±5.46)年,勤務形態は9名全員が常勤であった.調査協力施設は2施設で,B病院5名,C病院4名であり,双胎妊婦の受け持ち件数は,2~30件であり,1名は不明であった.自身に出産経験のある者は5名であった.インタビューの平均時間は47.6(±10.06)分であり,インタビュー回数は1回であった.対象者一覧を表1に示す.
ケース | 施設 | 年齢 | 助産師経験年数 | 双胎妊婦の受け持ち件数(概数) | 勤務形態 | 出産経験 | インタビュー時間(分) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Ⅰ | B | 31 | 9 | 20 | 常勤 | 無 | 34 |
Ⅱ | B | 33 | 10 | 20 | 常勤 | 無 | 51 |
Ⅲ | B | 51 | 26 | 20 | 常勤 | 有 | 58 |
Ⅳ | B | 40 | 15 | 20 | 常勤 | 無 | 58 |
Ⅴ | B | 45 | 12 | 30 | 常勤 | 有 | 54 |
Ⅵ | C | 31 | 8 | 20 | 常勤 | 無 | 50 |
Ⅶ | C | 31 | 10 | 30 | 常勤 | 無 | 56 |
Ⅷ | C | 44 | 11 | 不明 | 常勤 | 有 | 19 |
Ⅸ | C | 45 | 11 | 2 | 常勤 | 有 | 49 |
本研究で9事例より,23サブカテゴリーから9カテゴリーが抽出された.カテゴリーとサブカテゴリー一覧を表2に示す.なお文中の【 】はカテゴリー,≪≫はサブカテゴリー,「 」は特徴的な語りの一部を表す.
インタビュー結果の分析により助産師は【双胎妊婦は急変リスクが高いことを念頭におく】を意識し,【双胎妊婦とまず信頼関係を築く】ことを重要と考えていた.そして,助産師は【二児の児心音を短時間で正確に聴取することを最優先する】ために分娩監視装置装着の工夫や,【双胎妊婦は不快症状が強く現れやすいため意識して安楽な生活を工夫する】等,安楽に過ごす入院生活の重要性を認識していた.また,【双胎妊婦が分娩経過を受け止めることが大事】であると考え,個別的に分娩経過を説明していた.更に,【双胎児への愛着を促すことを常に意識している】,【双子の育児をイメージ出来ることを大切にする】の思いがあり,妊娠中から産後の育児を見据えて双胎妊婦と家族に働きかけていた.更に,助産師はこれらのケアに【十分介入出来ていないので満点をつけることはない】が,【双胎妊娠の思いを受け止め,頑張りを認めて全力で寄り添いたい】を合わせて認識していた.
カテゴリー | サブカテゴリ― |
---|---|
双胎妊婦は急変リスクが 高いことを念頭におく |
双胎妊婦は急変のリスクが高いことを念頭に置いて常に関わっている |
助産師は胎児に異常が生じた双胎妊婦に対する関わりに迷う | |
早産になる可能性が高い場合には,事前にNICUでの治療や母乳について情報提供する | |
双胎妊婦とまず信頼関係を築く | 助産師はケアにおいて母親の安心感と信頼関係は大事だと考える |
精神的にしんどい思いを持つ妊婦には,まず出来ることから関わる | |
二児の児心音を短時間で 正確に聴取することを最優先する |
胎児心拍モニタリングを行う際は安楽な姿勢で短時間で装着出来るよう心掛けている |
モニター装着を工夫し,二児の児心音を正確に聴取することが重要である | |
双胎妊婦は不快症状が強く現れやすいため 意識して安楽な生活を工夫する |
双胎妊婦は不快症状が現れやすいことを意識して観察し,安楽に生活出来るよう工夫する |
治療のため安静が必要となる双胎妊婦の生活環境を整える | |
双胎妊婦が分娩経過を 受け止めることが大事 |
産後に双胎妊婦が自分の分娩体験を振り返り受け止められるように,双胎の分娩経過については妊娠中から具体的に説明している |
双胎妊婦が妊娠,出産を受け止めることで良い状態で産後の育児に繋げると思う | |
入院中の双胎妊婦に対する分娩前教育については患者の状態や週数に応じて,個別的に行っている | |
双胎児への愛着を促すことを 常に意識している |
二人の児の存在を実感してもらうことで,双子への愛着を促す |
同時授乳の説明を通して二人の児の存在を実感してもらう | |
双子の育児を イメージ出来ることを大切にする |
助産師は双胎妊婦が産後に双子を育児出来ることが大切だと思い,妊娠中から双子の育児を意識出来るように関わっている |
育児への協力体制を整えるため,妊娠中から家族についての情報は意識してとっている | |
育児方針に対して固執する双胎妊婦には,本人を否定せず,困った時に頼れるように家族に働きかけた | |
助産師は双胎妊婦同士のエモーショナルサポートが重要であると考え,仲間づくりが出来る場を紹介している | |
十分介入出来ていないので 満点をつけることはない |
単胎妊婦と双胎妊婦とのケアで特別異なる点はなく関わっている |
入院中から関わっていた双胎妊婦が希望する形で退院出来なかった経験がある | |
助産師は自分の双胎妊婦へのケアに満点をつけることはない | |
双胎妊娠の思いを受け止め, 頑張りを認めて全力で寄り添いたい |
双胎妊娠や入院生活に対する思いを確認することは長期的なケアを行っていくために重要である |
助産師は双胎妊婦の頑張りを認め,思いを受け止めて全力で寄り添いたい |
助産師は双胎妊婦がハイリスクであり,単胎妊婦よりも合併症を発症しやすく,急変時には迅速に対応しなければいけないと考えていることを意味する.更に,膜性や不妊治療の有無等も,今後双胎妊婦の身体的・精神的負担に影響を及ぼす可能性がある.そのため,助産師は急変時に対応が出来る様に事前に情報収集をして双胎妊婦に関わっていた.更に,早産となる場合は予め双胎妊婦にNICUで行われる治療や産後の母乳についての情報提供をすることを意味する.これは,≪双胎妊婦は急変のリスクが高いことを念頭に置いて常に関わっている≫≪助産師は胎児に異常が生じた双胎妊婦に対する関わりに迷う≫≪早産になる可能性が高い場合には,事前にNICUでの治療や母乳について情報提供する≫の3つのサブカテゴリーから構成された.
≪双胎妊婦は急変のリスクが高いことを念頭に置いて常に関わっている≫「双胎の人に関しては,その単胎の人に比べて合併症とかそういうのが多くなるので(中略)もしかしたら起こっているかもしれない,起こるかもしれないっていうのを,ちょっと頭の中に入れて検温に行く.自然妊娠なのか,不妊治療後なのか.あとは膜性.そういうのは,まぁ既往歴とか一般的なとこも気になりますけど.」(ケースⅤ)
≪助産師は胎児に異常が生じた双胎妊婦に対する関わりに迷う≫「シビアな状況の人に,どうですかと聴くことはハードルは高い.ハードルは高いから,周りでぐるぐるしているような,中に入るタイミングが無い時もあった気がする.もうちょっとアプローチしたほうがよかったのではないかというときもあるが,助産師がうろうろすることで何かの機会があればいいのかなと思ったりはする.思いを聴くとか,私が言えることって少ないから,出してもらうしかない.」(ケースⅢ)
≪早産になる可能性が高い場合には,事前にNICUでの治療や母乳について情報提供する≫「間違いなく,早産になるだろうとか,NICUにいかないかん週数であるっていうのは確定しているような時とか,もう危ないような人とかはある程度,気持ちの整理じゃないですけど,意識をもってもらうためにも,ちょっと話したりはしますね.」(ケースⅦ)
2) 【双胎妊婦とまず信頼関係を築く】助産師は,双胎妊婦の精神状態に合わせて「まず出来ること」から関わっていた.助産師は双胎妊婦の妊娠経過や胎児の状態を把握し,妊婦の状態に合わせた声かけを行い,信頼関係を構築することがケアにおいて重要であると考えていることを意味する.これは≪助産師はケアにおいて母親の安心感と信頼関係は大事だと考える≫≪精神的にしんどい思いを持つ妊婦には,まず出来ることから関わる≫の2つのサブカテゴリーから構成された.
≪助産師はケアにおいて母親の安心感と信頼関係は大事だと考える≫「あなたの今の状態を私は把握していますよっていうのを,あえてこう伝えるというか,言うことで相手の安心感.」(ケースⅣ)
≪精神的にしんどい思いを持つ妊婦には,まず出来ることから関わる≫「入院するんが嫌とか,帰りたいとかって思う人も中にはおるやろうから(中略),まずそこが受け入れられるように,どうするかっていうのは考えてるかな.」(ケースⅠ)
3) 【二児の児心音を短時間で正確に聴取することを最優先する】助産師は,分娩監視装置の装着を工夫して,双胎妊婦が安楽に検査を受けられ,更に二児の児心音を正確に聴取したいと考えていることを意味する.これは≪胎児心拍モニタリングを行う際は安楽な姿勢で短時間で装着出来るよう心掛けている≫≪モニター装着を工夫し,二児の児心音を正確に聴取することが重要である≫の2つのサブカテゴリーから構成された.
≪胎児心拍モニタリングを行う際は安楽な姿勢で短時間で装着出来るよう心掛けている≫「一人よりもやっぱりお腹は大きくなってるので,同一体位でずっといるのってしんどいので,やっぱり早く巻いて,楽な姿勢で,短い時間でリアクティブを判断出来るっていうのはやっぱり負担が一番少ないかなと思うので.」(ケースⅣ)
≪モニター装着を工夫し,二児の児心音を正確に聴取することが重要である≫「まずモニターつけるときはイチコ(一児)とニコ(二児)がちゃんと違う.二人分取れているのかというのを,単胎以上に胎位を確認して,頭に入れていってる.カルテから情報を取って.」(ケースⅥ)
4) 【双胎妊婦は不快症状が強く現れやすいため意識して安楽な生活を工夫する】双胎妊婦は子宮が増大することにより,マイナートラブルも単胎妊婦より出現しやすい.助産師は身体的負担が生じていることを予測し,安楽に生活出来るよう工夫している.また行動範囲の制限や子宮収縮抑制剤による副作用が出現する中で,助産師は双胎妊婦が出来るだけ安楽に生活して欲しいと思い,ケアしていることを意味する.これは≪双胎妊婦は不快症状が現れやすいことを意識して観察し,安楽に生活出来るよう工夫する≫≪治療のため安静が必要となる双胎妊婦の生活環境を整える≫の2つのサブカテゴリーから構成された.
≪双胎妊婦は不快症状が現れやすいことを意識して観察し,安楽に生活出来るよう工夫する≫「やっぱり単胎の人よりは,身体的な負担っていうのはかなり強いかなぁっていうところで,不快症状がないかっていうことを双胎の人にはきくようにしていて.」(ケースⅢ)
≪治療のため安静が必要となる双胎妊婦の生活環境を整える≫「双胎妊婦ですごくか細い方で,マグセント®を投与していた患者がいたが,その時は体が動かなくて,(中略)トイレに近い部屋に移動したということはしました.」(ケースⅧ)
5) 【双胎妊婦が分娩経過を受け止めることが大事】双胎出産は単胎の出産よりも急変のリスクが高く,双胎妊婦は自分の出産に対して不安を持っている.また,不妊治療や長期入院等により双胎妊婦の目標が出産でとどまってしまい,産後の育児まで意識出来ない傾向にある.そのため,助産師は双胎妊婦に個別的に分娩経過の説明を行うことで,双胎妊婦が自分の出産体験を受け入れて,産後の育児に繋げて欲しいと思っていることを意味する.これは,≪産後に双胎妊婦が自分の分娩体験を振り返り受け止められるように,双胎の分娩経過については妊娠中から具体的に説明している≫≪双胎妊婦が妊娠,出産を受け止めることで良い状態で産後の育児に繋げると思う≫≪入院中の双胎妊婦に対する分娩前教育については患者の状態や週数に応じて,個別的に行っている≫の3つのサブカテゴリーで構成された.
≪産後に双胎妊婦が自分の分娩体験を振り返り受け止められるように,双胎の分娩経過については妊娠中から具体的に説明している≫「分娩を思い出せるためにも,その場を少しでも予測しながら,あああの時のこれやなとか,予備知識が多少あるとやっぱり人間は,不安が軽減もできるし,予測して行動ができると思うので.自分のお産を受け入れることが出来るように,繋がっていくと思うので,不妊治療とかしてたりとかして,そのお産自体を受け入れることができたら,そのあとの育児にも,プラスで流れて,繋がっていけるかなぁって思うので.」(ケースⅣ)
≪双胎妊婦が妊娠,出産を受け止めることで良い状態で産後の育児に繋げると思う≫「今の入院生活が,その人らしく,満足のいく生活になれるように関われる,その間に分娩とか産褥とか退院後の生活も見据えて,その人にあった,出来ることをちりばめつつ,ケアをしていくみたいな.」(ケースⅤ)
≪入院中の双胎妊婦に対する分娩前教育については患者の状態や週数に応じて,個別的に行っている≫「本当に35週とか,34週くらいになってくると,(中略)私ってこのままだと退院出来るんですかねとか,今生まれちゃったら赤ちゃんってどうなるんですかねって言い始めると,あ,これは介入のタイミングだろうなと思って.」(ケースⅨ)
6) 【双胎児への愛着を促すことを常に意識している】助産師は妊娠中から双胎妊婦が二人の児の存在を実感し愛着を形成することが,産後の育児にとって重要と考えており,常に児の存在を母親が実感出来るように働きかけていることを意味する.このカテゴリーは≪二人の児の存在を実感してもらうことで,双子への愛着を促す≫≪同時授乳の説明を通して二人の児の存在を実感してもらう≫の2つのサブカテゴリーで構成された.
≪二人の児の存在を実感してもらうことで,双子への愛着を促す≫「愛着を促すために,(中略)赤ちゃんのこととか,大きくなってることとか,なにせ,実感してもらう?あなたの赤ちゃんですよ,っていうことを実感?が,お腹の中におるときから,愛着ってきっとあるはずやから.」(ケースⅠ)
≪同時授乳の説明を通して二人の児の存在を実感してもらう≫「私は同時授乳を,必ず練習を,妊娠中から授乳モデルを使ってやるように心がけています.同時授乳の練習をするという目的をかねて,それで産後のことがイメージできて,ああ私はあと数か月したらこういうことをやってるんだなっていうことがわかれば,もうちょっとこの妊娠生活,入院生活も乗り越えていこうとか,(中略)前向きになれる手段の一つとしてもやっています.」(ケースⅡ)
7) 【双子の育児をイメージ出来ることを大切にする】助産師は,双胎妊婦が産後に育児が出来ることが大事だと考えている.単胎妊婦に比べ,双子の育児は負担が大きくなるため,身近にいる家族からの育児や家事のサポートが必要不可欠となる.また,双子を養育している母親や同じ状況にある双胎妊婦と話し仲間づくりをすることで,双子の育児についての具体的な情報を共有することができ,更に産後の育児をしている自分の姿をイメージすることが出来る.助産師は双胎妊婦の産後のサポートを意識して,誰から具体的にどのようなサポートを受けることが出来るのか情報を取り,同じ双胎妊婦や双子の育児をしている母親との仲間づくりを勧めることで,妊娠中から双胎妊婦が双子の育児のイメージを持つことを促していることを意味する.これは,≪助産師は双胎妊婦が産後に双子を育児出来ることが大切だと思い,妊娠中から双子の育児を意識出来るように関わっている≫≪育児への協力体制を整えるため,妊娠中から家族についての情報は意識してとっている≫≪育児方針に対して固執する双胎妊婦には,本人を否定せず,困った時に頼れるように家族に働きかけた≫≪助産師は双胎妊婦同士のエモーショナルサポートが重要であると考え,仲間づくりが出来る場を紹介している≫の4つのサブカテゴリーで構成された.
≪助産師は双胎妊婦が産後に双子を育児出来ることが大切だと思い,妊娠中から双子の育児を意識出来るように関わっている≫「実際,どうする?おうちで,ベッドですか?布団ですか?座れる椅子がある?絶対こういう椅子があったほうが楽だよ.なんかこう,実際の生活に即して行きたい,感じに.」(ケースⅢ)
≪育児への協力体制を整えるため,妊娠中から家族についての情報は意識してとっている≫「家族のサポートっていうのは,必ず確認する.一人じゃ育てられない.」(ケースⅠ)
「育児支援者はどれだけいるかっていうのは情報を取っていくうえで,単胎よりは詳しく.手はあったほうがいいですっていうことで,その辺もちょっと準備をかねてっていうところは意識的に,(中略)ちょっと支援者がいっぱいいたほうがいいですよ,楽ですからみたいな.」(ケースⅢ)
≪育児方針に対して固執する双胎妊婦には,本人を否定せず,困った時に頼れるように家族に働きかけた≫「親に手伝ってもらいます,夫に手伝ってもらいますっていうお母さんが多いんだけど,本人の性格的なあれもあるのか,(中略)触ってほしくないというか,私が手伝ってほしくない.自分がやりたいですみたいな性格の人.(中略)ちょっと大丈夫かな?っていうのを心配したことはありました.」(ケースⅣ)
「育児に関して言えばちょっと協力が必要ですよっていう話をしても,親に頼ってそんなにまでしてまで育児しなくても大丈夫ですっていう人がいた.家族の人にも本人さんはそうやって言ってるけど,しんどくなるからそういう時にはそっとこういう風に出来るといいですよねとか,固めるというか周りに本人さんにはあんまり言わずに,周りにアプローチしてみたり.」(ケースⅤ)
≪助産師は双胎妊婦同士のエモーショナルサポートが重要であると考え,仲間づくりが出来る場を紹介している≫「出産し退院するときに前向きに思えているかどうかが大事だと思うため,エモーショナルサポートが一番大事だと思う.(中略)助産師から提供出来るケアっていうのは限界があると思うので,ネットワーク作りのケアが一番大事なんかなって思います.私たちの手から離れた後も,お母さん同士が力を合わせて頑張れると思うので.」(ケースⅡ)
8) 【十分介入出来ていないので満点をつけることはない】入院中の双胎妊婦のケアは,単胎妊婦と類似している部分があり,助産師は双胎妊婦の基本的なケアは単胎妊婦へのケアと同様であると感じている.また双胎妊婦はハイリスク妊娠となり,医師による管理が最優先となるため,双胎妊婦の心理面でのケアが十分出来ていないと感じている.助産師は双胎妊婦の個別性を捉えたケアを行っているが,十分に介入出来ていないという自己のケアを認識していることを意味する.これは≪単胎妊婦と双胎妊婦とのケアで特別異なる点はなく関わっている≫≪入院中から関わっていた双胎妊婦が希望する形で退院出来なかった経験がある≫≪助産師は自分の双胎妊婦へのケアに満点をつけることはない≫の3つのサブカテゴリーで構成された.
≪単胎妊婦と双胎妊婦とのケアで特別異なる点はなく関わっている≫「まぁ緊急時には違うなって思うんとか,その管理的には気を付けないかんこといっぱいあるなぁっていうのは頭には入れてますけど,本人と関わるにあたって単胎と違うことって,なんなんでしょうか.」(ケースⅥ)
≪入院中から関わっていた双胎妊婦が希望する形で退院出来なかった経験がある≫「一番困ったのと,心残りやなって思ってる事例が一つあって,その人はね,統合失調症合併だったんです.(中略)なんかもうちょっと違う手立てがあったんちゃうんかとか,緊急で帝王切開になったっていうこと,の受け入れが変わったんじゃないかなとか.もうちょっとなんか出来ることがあったんじゃないかなって.」(ケースⅠ)
≪助産師は自分の双胎妊婦へのケアに満点をつけることはない≫「関わっている時は,その時出来る精いっぱいのことをやっているつもりであるが,自分の指導が足りなかったなどその時でないとわからない部分もあるため,(中略)これでなんとかなってよかったという感じで,自分のケアに対して100点をつけることはない.」(ケースⅦ)
「これがいいかな,あれがいいかなぁとか模索しながらやってきたけど,いつも,これでいいんかなぁって不安,正解がないっていうか,こんな指導でいいんだろうかとか.こんな方法でえんやろうかとか,っていう思いは常にあります.」(ケースⅠ)
9) 【双胎妊娠の思いを受け止め,頑張りを認めて全力で寄り添いたい】双胎妊娠とわかった時,妊婦は喜びよりも驚きや不安を感じることがある.助産師は,長期的なケアを行っていくために,まずは双胎妊娠とわかった時の気持ちを妊婦と共有し,受け止める.そして,妊娠中から分娩まで,入院管理や治療を頑張る双胎妊婦の姿を認め,自分が出来る限り寄り添い,全力で支えたいと思っていることを意味する.このカテゴリーは≪双胎妊娠や入院生活に対する思いを確認することは長期的なケアを行っていくために重要である≫≪助産師は双胎妊婦の頑張りを認め,思いを受け止めて全力で寄り添いたい≫の2つのサブカテゴリーで構成された.
≪双胎妊娠や入院生活に対する思いを確認することは長期的なケアを行っていくために重要である≫「双子だっていうだけで,きっとこれからどうしようって思いも大きくなると思うから,そこの最初のスタートが分かってないと,前には進めないっていうか,この人のケアってなにがいるんやろうなっていうのは,きっとわからんから,そこは確認するようにしてます.」(ケースⅠ)
≪助産師は双胎妊婦の頑張りを認め,思いを受け止めて全力で寄り添いたい≫「この子たちを産んで,最終的によかったなーって思ってもらえるようなところに,ゴールは持っていきたい.しんどい思いはそのまま受け止めて,あなたも頑張ってるし,赤ちゃんも頑張っているのよっていうことを認めてあげたい.」(ケースⅠ)
「すごいと思うんですよね.あの,ベッド上安静って本当苦痛じゃないですか.お母さん本当に頑張るんですよね.(中略)しかもありがとうございますって言ってくれたりとかするので, そんだけお母さん頑張られると,本当にすごいなっていうことが実際あると.こっちが諦めるわけにはいかんわなって思う.」(ケースⅦ)
助産師は,双胎妊婦を受け持つ前に不妊治療の有無や膜性,妊娠経過等の個別的な情報を収集していた.双胎妊娠は単胎妊娠に比較し妊娠経過および分娩周辺期において母体合併症のリスクが上昇する17)ことが明らかとなっている.状態によっては早産となることや,緊急帝王切開となることなど単胎妊婦と比較し,双胎妊婦は急変リスクが高くなると考える.本研究で助産師は,双胎妊婦の急変リスクと,急変時には迅速な対応が必要となることを理解しており,双胎妊婦が合併症の発生頻度が高いという認識の上に立ち個別的な情報を把握していると考える.
また,本研究において助産師は,双胎妊婦が今後の妊娠経過等について不安を抱いていることに加えて,病院という環境の中で妊娠生活を過ごすことによるストレスについて理解していた.このような双胎妊婦に長期的に関わるために助産師は,安心感と信頼関係の構築が重要であると認識していると考える.助産師は双胎妊婦に関わるにあたり,信頼関係を構築するため,双胎を妊娠するまでの過程や妊娠経過を把握していた.そして助産師は双胎妊婦の状態に応じたコミュニケーションを図り,安心できるように関わっていた.J. Travelbee18)の「人間対人間の看護」では,「個人が患者として知覚されるか,あるいはひとりの独自な人間として知覚されるかということが非常に重要である」と述べている.本研究においても,助産師は双胎妊婦を「独自な人間」として知覚することで,双胎妊婦の不安を軽減し,信頼関係を構築し,更に個別性とニードを捉え,今後必要となるケアを見出し計画していると考察する.
これらのことから,助産師は双胎妊婦に対して急変リスクが高いと捉えており,急変時には対応出来るように常に意識しており,更に入院中の双胎妊婦がストレスを抱えていることを理解し,長期的に支援していくために双胎妊婦の安心と信頼関係の構築が必要と認識していると考える.
2. 助産師の双胎妊婦へのケアに対する認識助産師は分娩監視装置の装着を工夫していた.分娩監視装置は,入院中の双胎妊婦が日常的に行う検査で,状態により医師が検査の回数を指示する.双胎妊婦は約40分間,安静の状態で検査を受けることとなる.助産師はハイリスク妊婦である双胎妊婦にとってNST(Non-Stress Test)検査を正確に行うことは胎児の健康状態を評価するために重要であると認識しており,尚且つ双胎妊婦の検査による身体的負担を考慮し,正確に短時間で検査が出来るように工夫していると考える.また,双胎妊婦は入院中に子宮収縮抑制剤などを用い,安静のために行動が制限される.更に,増大した子宮により腰痛や胃部不快感などの不快症状も単胎妊婦よりも早期に出現する.本研究において,助産師は双胎妊婦の不快症状が強く現れることを理解しており,意識して安楽な生活を工夫していた.このことより助産師は双胎妊婦の不快症状を軽減できるようケアし,安楽に入院生活を送ることが重要と認識していると考察した.
また,助産師は妊娠中から個別的に分娩経過について説明を行っていた.双胎妊婦の出産は,単胎妊婦と比較しハイリスクであるため帝王切開になる可能性が高く,更に分娩様式の選択は双胎妊婦の特徴的なストレスであることが明らかとなっている8).また分娩に対する満足度は産後の児に対する愛着に影響することが報告されており,有本ら19)は出産満足度が高いほど児に対する愛着が良好であり,出産満足度に関するケアのうち「妊婦健康診査時に母親が医療者からの説明で心身の状態を理解出来る」ことが愛着を高めると報告している.つまり,助産師は双胎妊婦の出産満足度を高めることで双子への愛着を高めることが重要と考え,妊娠中から双胎分娩の経過について個別的に情報提供し,受け止められることが重要と認識していたと考える.
更に,助産師は妊娠中から産後の育児を見据えた関わりが重要であると考えていた.双胎家庭の母親は,単胎児家庭の母親に比べ,疲労感が強く,睡眠状態も悪化し,かつ時間的に余裕がない中で育児に追われていることが報告されていた9).また,多胎家庭は単胎家庭に比べ虐待死の発生頻度が高く,要因として過度の育児負担や,双子両児に見られる差や児の比較が関係する10)と報告されている.このことからも,双胎妊婦への妊娠中からの愛着形成の促進や産後の育児に対する情報提供は重要であると考える.また,双子は単胎の育児と比較し,育児負担が大きくなることから,産後の双子の育児には家族のサポートが必要不可欠である.福島ら20)は妊娠期からの胎児妊婦ピアサポートは,<知識や情報の充足と育児のイメージ化>,<仲間づくりのきっかけ>の効果があると述べている.本研究においてもサブカテゴリーとして≪助産師は双胎妊婦同士のエモーショナルサポートが重要であると考え,仲間づくりが出来る場を紹介している≫が抽出された.このことより周囲に双子の育児経験者がおらず,妊娠期から情報を得る場が少ない双胎妊婦にとって,双子育児経験者や入院中の双胎妊婦同士が可能な範囲で交流出来る場の提供は仲間づくりと情報収集に効果的であると考える.そして双子を育児する母親の姿に,双胎妊婦は勇気づけられ安心して妊娠生活を送ることが出来ると考える.本研究の助産師も,仲間づくりは双胎妊婦同士の情報交換や双子の育児を意識することに有効であると捉えていることから,【双子の育児をイメージ出来ることを大切にする】と認識していた.
このように,本研究の対象者である助産師は双胎妊婦の特性を捉えたケアを行っていたが,自己のケアに対して【十分介入出来ていないので満点をつけることはない】と認識していることが明らかとなった.入院している多くの双胎妊婦は切迫早産予防のための安静や治療を受けることとなるため,助産師は入院中の双胎妊婦に対するケアは,切迫早産で治療を受ける単胎妊婦に対するケアと同様であると感じていることから,本研究結果のサブカテゴリー≪単胎妊婦と双胎妊婦とのケアで特別異なる点はなく関わっている≫と認識していたと考える.川越21)は,ハイリスクであるがために治療が優先されてしまい,母親の精神面や心理面でのケアが後回しになっていることに助産師は割り切れない思いを持っていると報告している.本研究において助産師は双胎妊婦の個別性を考慮したケアを目指しているが,「こんな方法でえんやろうか」等,実践したケアが双胎妊婦のニーズに対応できているのか疑問を持っていること,更に医師の管理が優先される中で双胎妊婦のニーズに応えることが出来ていないと感じていることが明らかとなった.
このように,双胎妊婦と単胎妊婦のケアに差異が無いと感じることや,医師の管理が優先されることにより双胎妊婦のニーズを満たすことが出来ていないと感じることが,十分に双胎妊婦に関われていないという助産師の認識に影響を及ぼしていると考える.
加藤22)は,病棟助産師に対して調査を行った結果,64.7%の助産師が仕事に対して不満足であったと答えている.不満足な理由として,医師との関係の中で助産師としての主体性が持てないことや,助産師としての力が発揮できていない等を報告している.また,仕事の満足感と自己効力感との関連で,不満と答えている者の自己効力得点は有意に高い傾向を示していたことを報告している.本研究において,助産師が双胎妊婦のケアに対して「満点をつけることはない」と認識しているのは,もっと双胎妊婦に助産師としての力を発揮して関わりたいという高い目標を持っていることが影響していると考える.つまり【双胎妊娠の思いを受け止め,頑張りを認めて全力で寄り添いたい】という認識は,助産師の双胎妊婦に対するケアの目標であり,助産師は正常妊婦だけではなく双胎妊婦に対しても安心・安全に子どもを産み育てることが出来るようにニーズを汲み取り最善のケアを提供したいと認識していると考える.
以上のことより,助産師は双胎妊婦特有の急変リスクに伴う身体的・精神的負担を考慮して,安全・安楽な入院生活の重要性,および双胎の分娩経過と双子育児がイメージできる重要性を認識していた.そして双胎妊婦と単胎妊婦でケアに差異がないと感じることや,医師の管理が優先され双胎妊婦の心理的側面に十分関われていないと感じることから十分介入出来ていないという認識を持っていた.それと同時に助産師は,一人一人の双胎妊婦を理解し,特有のニーズを汲み取り,単胎妊婦と同様に双胎妊婦も安全に妊娠・出産,育児が出来るようなケアをしたいという目標を持っていることから,双胎妊娠に全力で寄り添いたいと認識していると考察した.
助産師は双胎妊婦へのケアに対して十分関われていないが,双胎妊婦にもっと全力で寄り添いたいという高い目標を掲げていることが明らかになった.助産師は双胎妊婦への理解をより深めると共に,双胎妊婦に特化した保健指導内容の確立やピアサポートの導入等の必要性が示唆された.
本研究を行うにあたり,ご協力いただきました看護部長様,看護師長様ほか,快くご協力くださいました助産師の皆様に深く感謝いたします.