2022 年 26 巻 1 号 p. 37-49
目的
双子をもつ父親が,妊娠期から現在に至るまでどのように感じ考えて双子育児をしていたのか,その体験を明らかにすることである.
方法
A県内で双子の父親10名を対象に,半構造化面接法を行い,質的帰納的記述的に内容の分析をした.香川大学医学部倫理委員会の承認後に実施した.
結果
分析結果より,19サブカテゴリー,6カテゴリーが得られた.双子をもつ父親は妻の妊娠が分かった時,夫婦ともに,【双胎妊娠の喜びと育児の不安】を抱いていた.そして,双子育児が始まると,【親のサポートと双子育児の情報で安心】と感じながらも,手に負えない育児をしている妻をみて,あらためて,【大変な双子育児をしている妻へのねぎらい】の大切さに気付き,【協力してやるしかない双子育児】を覚悟した.また,双子をもつ父親は,【仕事と育児の葛藤】を抱きながらも次第に,【双子の一人一人を大事にした子育てをしたい】という父親役割を認識する体験をしていた.
考察
双子の父親は,想像していた以上に大変な双子育児を妻とともにすることで,妻の心身への関心と配慮の重要性を実感し,妻へのねぎらいの大切さに気付き,協力してやるしかない双子育児の覚悟を決めていたと考える.また,ワークライフバランスを模索しつつ,父親なりの双子一人一人の個性を大事にする理想の家族像への期待は,双子をもつ父親の価値観の変容と双子の父親の役割認識につながっていると考える.
結論
双子の父親は妻とともに双子育児をすることで,ワークライフバランスを模索しつつ,父親なりに双子の個性を大事にする理想の家族像を描いていた.双子をもつ父親の体験は,価値観の変容と双子の父親の役割認識に影響していた.
Purpose: To clarify the parenting experience of fathers with twins on how they felt and thought from the time of pregnancy to the present.
Methods: Semi-structured interviews were conducted involving 10 fathers raising twins, and the obtained data were analyzed using a qualitative and inductive approach. This study was conducted with the approval of the ethics committee of Kagawa University Faculty of Medicine.
Results: As a result of analysis, 6 categories were obtained. When the fathers of twins found out that their wives were pregnant, they were both [happy that she was expecting twins and worried about raising twins]. As they began to raise twins, [support from their parents and information about raising twins made them feel secure]; however, looking at their wife struggling to take care of twins, they realized the importance of [showing appreciation to their wife for her hard work in raising twins], which made them determined to [cooperate in raising their twins]. While [struggling to manage work and childcare], they then started to wish to [raise twins as individuals] as they gradually understood the role of a father.
Discussion: The fathers raising twins tried to seek a work-life balance by sharing the hard task of raising twins with their wife, while at the same time envisioned an ideal family that values the individuality of each child in their own way.
Conclusion: The experience of fathers raising twins had an impact on the changes in their sense of values and perception of their role as the father of twins.
近年,女性の社会進出に伴いライフスタイルが大きく変化し,共働き世帯が増加している.2010年には男性の育児参加推進を目的としたイクメンプロジェクト(厚生労働省,2010)が開始された.しかし,2019年の男性の育児休業取得率(厚生労働省,2020a)は7.48%まで上昇したものの,2020年の目標13%(厚生労働省,2020b)までには至っていない.さらに,2016年に公表された社会生活基本調査(総務省統計局,2017)では,6歳未満の子どもを持つ夫・妻の家事関連時間では夫1時間23分/日(うち育児49分)で,日本は先進国中最低の水準である(内閣府,2019).
一方,日本では1980年以降に生殖補助医療が普及・発展し,現在胚移植は原則単一(日本産科婦人科学会,2018)とされているが,自然妊娠や不妊症に対する排卵誘発剤使用等の影響もあり,多胎妊娠の相対的増加が予測される.2018年の人口動態統計(厚生労働省,2020c)によると,多胎児の分娩は9,745件で分娩全体の約1%を占めている.多胎出産では周産期のさまざまな疾患のリスクが高く,障がいの発生頻度も単胎より大きくなる(大木ら,2010).また産褥期のうつ状態のリスクが2~3倍高いことから,多胎児は小児虐待のハイリスク群とみなされている(大岸,2010).2020年,産前・産後サポート事業(厚生労働省,2020d)の改定において,多胎妊産婦への支援内容が盛り込まれたことからも,多胎妊娠・出産・育児において,妊産婦とその家族が安心して過ごせる環境を整えることは重要な課題であると言える.
多胎育児では,母親の睡眠時間が減少し時間的に余裕のない中で育児に追われている(横山,2002).また,産後は夫の6割以上が授乳・食事・沐浴と入浴,外出の援助を行っていた(矢野ら,2001)ことから,特に夫の協力が不可欠である(北岡ら,2002).さらに,多胎育児において父親は,夜間も起きて手伝う状況から生活の改革を迫られていた(富安ら,2007)ことや,育児による拘束感を抱いている(林ら,2012)ことが報告されている.多胎育児は一度に複数の子どもが増えるだけではなく,同時あるいは時間差で一人一人に関わることが必要となり,一人の子どもよりも育児に手がかかることが推察される.そのため,多胎育児家庭において特に父親の役割が重要であると考える.しかし,多胎育児における父親に関する文献はわずかであり,その大部分は量的研究である.多胎児の中でも双子に限定し,その父親に焦点を当てた質的研究は,NICUを退院した双子を養育する父親の実際(白坂ら,2013)や,双子をもつ父親の気持ちと育児の現状(渡邉ら,2011)などが報告されているのみで,双子をもつ父親の体験を明らかにしたものはなかった.
そこで,本研究により父親が妊娠期から現在に至るまで,どのように感じ考えて双子育児をしていたのか,その体験を質的研究で明らかにすることで,双胎妊娠が判明した時から,双子がいる生活をイメージしたそれぞれの時期における父親の役割と,夫婦が協力して行う育児やワークライフバランス等について検討するための基礎資料になり,母親と父親が安心して双子を育てる環境づくりに貢献できると考える.
双子をもつ父親が,妊娠期から現在に至るまでどのように感じ考えて双子育児をしていたのか,その体験を明らかにすることである.
:親となる男性が妊娠を機に妻への愛情を再確認することで,夫・父親として協力する気持ちが芽生える(森田ら,2010)ことや,父親になると意識するのは妻の妊娠を知ってからである(三浦ら,2004)ことから,妊娠中からの思いは父親役割や育児に影響すると考える.そこで,本研究における双子をもつとは,妻が双胎妊娠をしている妊娠期から現在の育児期までを含めて双子をもつことと定義する.
2) 父親:広辞苑(新村,2018a)では,父は「男親.父親.実父・義父・養父の総称」とあり,父親は「男親」とされている.そこで,本研究における父親は,生物学的な父親に限らず,養父などの社会的な父親も含み,双子の子どもを育てる男親と定義する.
3) 体験:広辞苑(新村,2018b)では体験は「自分が身をもって経験すること」とある.文献(枝松ら,2018)では,体験をある出来事で生じた思考あるいは感情,またはそれに伴い行った行動と定義している.そこで本研究における体験は,双子の育児期までをとおして身をもって感じたり考えたりした思考あるいは感情,またそれに伴い行った行動を父親が自らの言葉で表現したものと定義する.
2. 研究デザイン半構造化面接法による質的帰納的記述研究である.文献が少なく,現象をありのまま詳細に記述していくために,質的記述的研究が適していると考えた.本研究では,双子をもつ父親の体験の語りやふるまいからなるべく離れず,推論をできるだけ少なくして出来事を忠実に解釈し,帰納的に内容の分析をした.
3. 研究対象者および選定基準研究対象者は,研究協力団体から推薦を受け,本研究に同意が得られた双子の父親10名とした.研究対象者の選定基準は,生後6か月~3歳までの双子の父親で,法的に妻と婚姻関係にあり,妻と双子と同居の父親とした.父親の職種や双子が一緒に退院したかについて,また双子の兄や姉の有無や,実父母や義父母の同居の有無は問わないとした.対象者もしくは妻との会話が困難と判断した場合や,双子の子育てに影響を与えると思われる重篤な疾患やけが等が双子のどちらかまたは双方にある場合,双子に弟や妹がいる場合は除外した.
4. 研究対象者の選定方法A県内の双子サークルを開催している3つの団体の代表者に,口頭と文書で研究の目的・趣旨を説明し研究協力を依頼した.後日,本研究の選定基準に合う双子の家族の推薦を受け,推薦を受けた父親と母親に対し電話を用いて研究の目的・趣旨等を説明し,研究協力を依頼した.研究対象者にも研究説明文書を郵送し,同意の得られた父親10名を選定した.
5. 調査方法調査期間は令和2年5月~9月である.新型コロナウイルス感染症拡大予防策として,密閉,密集,密接を避けるための手引き(内閣官房内閣広報室,2020)を活用した.対面は極力避け,インターネットを活用した会議システムや電話等の方法を研究対象者に説明し,実施可能な方法を選択依頼した.基本属性はフェイスシートを作成し情報を得たのち,インタビューガイドに基づき半構造化面接を行った.インタビュー調査の所要時間は30~60分程度とし,内容は研究対象者の同意を得てICレコーダーに録音した.
6. 調査内容 1) フェイスシートによる質問項目研究対象者・妻の年齢,職業,平均残業時間/月,研究対象者の産前産後休暇(有給休暇)・育児休業取得の有無,妻の産前産後休業・育児休業取得の有無,双子の妊娠中における妻の入院の有無と期間,分娩様式,妻の里帰り出産の有無と期間,家族構成,周囲からの支援状況,双子の年齢,出生週数,出生時体重,NICU・GCU・小児科病棟など病院からの退院時期
2) インタビューの内容双子の妊娠が分かった時点から育児をしている現在までの体験を振り返ってもらい,父親がどのようなことを感じ考えて行動していたのかについて,インタビューガイドに基づきインタビューを実施した.具体的には以下の8項目である.
質的帰納的に内容の分析を行った.まずインタビュー内容を逐語録化し,研究対象者毎に丁寧に読み込んだ.文脈的に意味のある文節で区切り,1つの意味になるように整理し切片化し,データの意味や表現を検討しながらコード化した.研究対象者に逐語録とコードを郵送し,内容の確認を行いデータの真実性の確保を図った.コード間の意味の類似性に基づいて分類し,サブカテゴリー化した.サブカテゴリーの意味が同質のものをグループに分類し,カテゴリー化した.得られたカテゴリー間の関連性については結果において系統的に記載した.
また,研究者によってかかるバイアスを最少にするためにインタビューガイドを作成した.そして,研究対象者ごとに大学院生,修了生および教員間で討議を繰り返し,質的研究に精通した指導教員にスーパーバイズを受けた.
8. 倫理的配慮本研究は,香川大学医学部倫理委員会の審議により承認を得て実施した(受付番号2020-024).研究責任者が研究対象者に対し,研究の目的,方法および倫理的配慮について文書および口頭による十分な説明をした.同意取得にあたっては,研究対象者が説明内容を十分に理解したことを確認した上で,研究への参加について本人の自由意思による同意を文書で取得した.また,調査途中であっても協力を辞退することが可能であることを説明した.
インタビューの協力が得られた双子の父親10名を分析対象者とした.研究対象者の平均年齢は37.8(±5.3)(31-46)歳であった.職業は会社員7名,自営業2名,公務員1名であり,平均残業時間は23.7(±29.7)(0.5-100)時間/月であった.双子が出生した時の休暇は,取得無5名,取得有5名であった.取得期間は1~7日で,最長の7日を取得した1名は,双方の実家が県外にあるものの里帰り出産をしていなかった.また,育児休業は全員が取得していなかった.同居家族の構成員は,核家族が9名,義父母との同居1名であった.双子の上に子どもがいたものは4名であった.妻の平均年齢は35(±5.5)(28-44)歳で,妻の就労は有7名,無3名であった.妻の産前産後の里帰りは有5名,無5名であった.10名全員が義母からの育児支援を受け,次いで義父と実母がそれぞれ6名,実父4名であった.その他ではファミリーサポートや一時保育を利用しており,育児支援者が一人もいなかったものはみられなかった.研究対象者10名全ての双子が同時に退院をしていた.インタビュー方法は対面5名,電話4名,ビデオ通話1名であった.インタビューの平均時間は45.9(±14.5)(23-66)分であり,インタビュー方法による所要時間の違いはなかった.研究対象者の概要を表1に示す.
研究対象者 | 年齢 | 職業 | 平均残 | 双子出生時の休暇取得 | 同居家族 | 妻 | 育児支援 | インタビュー | |||||||||||||
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業時間 | 有給休暇 | 育児休業 | 上の子(年齢) | 年齢 | 就労 | 産前産後 | 実父 | 実母 | 義父 | 義母 | ファミリー | その他 | 方法 | 時間 | |||||||
(時間/月) | (日) | 双子(年齢) | の里帰り | サポート | (分) | ||||||||||||||||
A | 40歳代 | 自営業 | 20 | 無 | 無 | 妻 | 40歳代 | 無 | 有 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 義理の兄弟 | 対面 | 33 | |||||
双子(2歳3か月) | (県外4か月) | (里帰り時) | |||||||||||||||||||
B | 30歳代 | 公務員 | 3 | 有 | 無 | 妻 | 40歳代 | 有 | 有 | 〇 | 〇 | 電話 | 23 | ||||||||
(3.5) | 上の子(9,7歳) | (県内2か月) | |||||||||||||||||||
双子(11か月) | |||||||||||||||||||||
C | 40歳代 | 会社員 | 0.5 | 無 | 無 | 妻 | 20歳代 | 有 | 有 | 〇 | 〇 | 〇 | 一時保育 | 対面 | 36 | ||||||
双子(1歳11か月) | (県外3か月) | ||||||||||||||||||||
D | 30歳代 | 自営業 | 100 | 無 | 無 | 妻 | 30歳代 | 有 | 無 | 〇 | 〇 | 〇 | 対面 | 50 | |||||||
上の子(8,6歳) | |||||||||||||||||||||
双子(1歳3か月) | |||||||||||||||||||||
E | 30歳代 | 会社員 | 3 | 有 | 無 | 妻 | 30歳代 | 有 | 有 | 〇 | 〇 | 〇 | 対面 | 63 | |||||||
(3) | 双子(2歳11か月) | (県内1.5か月) | |||||||||||||||||||
F | 30歳代 | 会社員 | 30 | 有 | 無 | 妻 | 30歳代 | 無 | 無 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 電話 | 43 | ||||||
(7) | 双子(2歳4か月) | ||||||||||||||||||||
G | 30歳代 | 会社員 | 10 | 有 | 無 | 妻 | 30歳代 | 有 | 無 | 〇 | 〇 | 電話 | 64 | ||||||||
(数日) | 双子(1歳5か月) | ||||||||||||||||||||
H | 40歳代 | 会社員 | 20 | 有 | 無 | 妻 | 40歳代 | 無 | 有 | 〇 | 〇 | 対面 | 66 | ||||||||
(1) | 双子(2歳6か月) | (県内1年) | |||||||||||||||||||
I | 30歳代 | 会社員 | 10 | 無 | 無 | 妻 | 30歳代 | 有 | 無 | 〇 | 〇 | ビデオ | 40 | ||||||||
上の子(3歳) | (妊娠を機 | 通話 | |||||||||||||||||||
双子(1歳1か月) | に同居) | ||||||||||||||||||||
義父母 | |||||||||||||||||||||
J | 30歳代 | 会社員 | 40 | 無 | 無 | 妻 | 30歳代 | 有 | 無 | 〇 | 〇 | 〇 | 電話 | 41 | |||||||
上の子(6歳) | |||||||||||||||||||||
双子(6か月) |
双子の父親10名の分析結果より,19サブカテゴリー,6カテゴリーが得られた.以下,【】はカテゴリー名を表す.
双子をもつ父親は妻の妊娠が分かった時,夫婦ともに,【双胎妊娠の喜びと育児の不安】を抱いていた.そして,双子育児が始まると,【親のサポートと双子育児の情報で安心】と感じながらも,手に負えない育児をしている妻をみて,あらためて,【大変な双子育児をしている妻へのねぎらい】の大切さに気付き,【協力してやるしかない双子育児】を覚悟した.また,双子をもつ父親は,【仕事と育児の葛藤】を抱きながらも次第に,【双子の一人一人を大事にした子育てをしたい】という父親役割を認識する体験をしていた.
次に,カテゴリーとサブカテゴリーについてデータを挙げて説明する.以下≪≫にサブカテゴリー名と,「」に特徴的な語りを斜体で表す.双子をもつ父親の体験のカテゴリーとサブカテゴリーは表2に示す.
コード | サブカテゴリー | カテゴリー |
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不妊治療をしていたので双子の妊娠は嬉しかった | 双子の妊娠とわかり嬉しい | 双胎妊娠の喜びと育児の不安 |
子どもを希望していたので,双子とわかった時はやっぱり嬉しかった | ||
子だくさんが夢だったので,双子になると言われて嬉しかった | ||
なかなか子どもができなかったので双子で嬉しかった | ||
双子で驚いたが,楽しそうな印象しかなかった | ||
双子の場合の子育てはどうなるのか想像できなかった | 双子を同時に育てることが想像できず不安になる | |
二人を同時に育てることが想像できず,不安で血の気が引いた | ||
妊娠は嬉しかったが,双子との生活が想像できなかった | ||
支援体制がないと双子は大変だと聞き,育てられるか不安になった | ||
双子の育児も困らないだろうと甘く考えていたが,双子教室のビデオを見てこれは大変だと感じた | ||
家族が増える嬉しさと大変さが二倍になる不安があった | ||
実家の(親の)助けがあると安心できる | 双方の親のサポートで安心する | 親のサポートと双子育児の情報で安心 |
義父母が双子の育児を手伝ってくれて助かった | ||
双方の両親が来てサポートしてくれ,人の手があると助かった | ||
転勤があるので,親の支援が必要だと感じている | ||
双子教室や知り合いの双子の親から育児情報を聞いて助かった | 双子育児の情報で助かる | |
経験者から双子育児の話を聞いて楽になった | ||
大変さや楽しさは人それぞれだが,双子育児の話が聞けて面白かった | ||
情報も人手もないので,双子を連れての外出は大変 | ||
双子を連れての外出は場所が限定され大変だ | ||
双子育児の情報がなくどうしようもなかった | ||
双子が生まれた時は,感動よりも家内へのねぎらいの気持ちが大きかった | 妻をねぎらう | 大変な双子育児をしている妻へのねぎらい |
双子の育児は大変なので毎日育児をしている家内に感謝している | ||
妻が健康な双子を生んでくれて感動した | ||
嬉しそうに赤ちゃんを抱く嫁さんを見て感無量だった | ||
嫁がお産で頑張っている姿に感動した | ||
妻には社会に出て息抜きしてほしい | ||
嫁の身体への負担を考えると素直に双子を喜べなかった | ||
妊娠中の奥さんがしんどい時は(笑わせたり家事や育児用品の準備をして)自分ができることはすべてやった | 妻のためにできる限りのことをする | |
仕事に重きを置いていたことで妻が不安かと思い,負担をかけないよう極力家事を手伝った | ||
妊娠中の嫁さんが無理しないよう(話を聞いたり家事をして)なるべくケアした | ||
奥さんの身体が大変だと思いできるだけ家事を手伝うために仕事から早く帰った | ||
安静入院で気が滅入ってる嫁のために,できるだけ一緒に過ごせるよう努力した | ||
家内のストレスがたまって大変なので,できる限りの育児をやった | ||
イライラしている妻を気にかけて外出を勧めたりできるだけの育児をした | ||
週末里帰り中の妻に会いに行き,時間を気にせずおむつ替えやミルク,沐浴をしてできるだけ一緒に過ごした | ||
家内が困らないようにできるだけ早く帰宅して,家事や育児(離乳食とミルク,お風呂と寝かしつけまで)をすることは自然体だ | ||
双子を妊娠中の家内の身体の負担に気づき,助けたいと悔い改めた | ||
妊娠の喜びよりもとにかく嫁が無事でいてほしい一心で家事をやるしかなかった | ||
妻の性格を尊重し,妊娠中は手伝える家事をしたり上の子の面倒をみた | ||
毎日仕事が終わると入院中の妻に会いに行った | ||
仕事が休みの日は少しでも病院で一緒に過ごせるようにした | ||
双子の育児と家事は大変なので,嫁さんのために自由な時間を作ってあげた | ||
双子育児をやりやすいような部屋を家内に準備した | ||
寝る時間がなくてしんどそうな家内にいたわりの声をかけた | ||
入院中双子の授乳でしんどくなった嫁さんをもっとサポートしたいと思い励ましの声をかけた | ||
イライラしている妻の様子を見ながら,負担にならないよう家事をしている | ||
双子の育児のしんどさが奥さんの表情に出ても当然無理ないと思った | 双子育児で妻がイライラするのがわかる | |
小さい双子と一日中一緒にいると,家内がイライラするのもわかる | ||
双子が集う機会は奥さん同士の気分転換になり助かる | 楽しく双子育児をする妻を見て安心する | |
双子の子育てを楽しんでいる嫁を見て安心した | ||
一人目の時より楽しそうに育児をする奥さんが余裕があるように見えほっとした | ||
夜の三時間毎の授乳はさすがにこたえた | 双子育児は全部が倍で大変になる | 協力してやるしかない双子育児 |
一人目の時とはわけが違い,二人同時に泣いたり寝かけても片方が泣くと大人の手が足りず大変だった | ||
どちらかが常に泣きストレスがたまるので,双子は可愛いだけでなく大変だ | ||
子どもがそれぞれ起きるので睡眠時間が少なくなり,仕事にならず困った | ||
双子は全部二倍になるので大変だ | ||
双子で幸せだが,やることが同時に起こると二倍が四倍になり,一日をこなすのはしんどい | ||
双子との生活は嬉しい反面,一人の目で二人を見るのが不安だ | ||
双子育児は大変だが,楽しいことも二倍になる | ||
双子しか知らないのでこんなものだと思って育児している | ||
みんなイライラしてしんどいが,当たる場所も時間もないのでストレスを感じないようにしている | ストレスの発散先がなくイライラする | |
ストレスの発散先がないことや夫婦の考え方の違いでイライラする | ||
子ども中心の生活になり多少の寂しさがある | 子ども中心で自由な時間をあきらめる | |
子ども優先の生活になり自分のやりたいことはあきらめた | ||
一人の自由な時間はなくなり子ども中心の生活になった | ||
母親一人では手に負えないので,好きではないおむつ替えもしぶしぶやっている | 妻と協力してやるしかない | |
母親だけではどうにもならず,旦那が協力しないといけないことを世間の人に分かってほしい | ||
子どもが双子だから育児をやるしかなかった | ||
奥さんと助け合わないとできないことを実感し,家事や育児を自分からしている | ||
片方が泣くともう一人が起きて寝れずしんどいので,嫁さんと共倒れにならないよう試行錯誤した | ||
一人が泣くとみんな寝られず,睡眠時間を取れる工夫をした | ||
双子育児は完璧にはできないので,お互い無理せず頑張りすぎないことを心がけている | 陰で妻を支える | |
男性の育児は母親を陰で支える方がいい | ||
しゃしゃり出ず妻に言われたとおりにする姿勢でいる | ||
仕事が忙しくて早く帰れない時は奥さんの育児の負担が大きくなり迷惑をかけた | 仕事は犠牲にできない | 仕事と育児の葛藤 |
新しい仕事に慣れるのに必死で,妊娠中の嫁に迷惑をかけた | ||
仕事で育児を手伝えないので奥さんが大変だ | ||
妻が大変で申し訳ないが,将来を考えると仕事を犠牲にしたくない | ||
先は長いので仕事は辞められない | ||
仕事で一か月に一回しか会えず,みんながいる家に早く帰りたかった | ||
家内のサポートで,仕事への姿勢を続けることができた | ||
子育ての環境を理解してくれる会社はありがたい | 仕事と育児を両立させる | |
仕事と育児は切り離して,割り切って両方する方がいい | ||
仕事と家庭のバランスを今まで以上に考えるようになり,家族の時間が増えた | ||
双子はやっぱり小さかったけど,生まれてきてくれてありがとうと思う | 双子が生まれてきたことに感謝する | 双子の一人一人を大事にした子育てをしたい |
子どもを初めて抱いた時,生まれてきた感謝と命の重みを実感した | ||
生まれてきた双子に感謝の言葉をかけた | ||
予定より早く生まれたが子どもが無事に生まれてよかった | ||
双子が生まれたことで責任感がもて,仕事に対する気力の支えになった | ||
双子育児で視野が広がり,成長していることに気づく | ||
保育器にいる息子は抱っこもできなかったが,できるだけ会いに行った | 小さな二人を見て双子を実感する | |
NICUにいる子はすごく小さかったが,少しの時間でも会いに行き抱っこした | ||
小さな二人を見て前よりもっと双子を実感し嬉しかった | ||
子どもが少し動くだけでも感動し,二人を見ていて飽きなかった | ||
育児の情報に左右されず目の前の双子がどういう状況かを自分の目で確認したい | それぞれの個性を大事にしたい | |
自分が子どもとしっかり向き合うことが大事だ | ||
双子の一人一人を大事にして自分らしい子育てをしたい | ||
双子それぞれの個性を見比べられることができて嬉しい | ||
性格も好きなものも違い,双子は見ていて飽きない | ||
子どもの成長は早いので,極力関わりたい | ||
可愛い子どもたちの成長を見守れる楽しみがあり,巣立つまではできることをしてあげたい | ||
二人とも平等に接してあげたい | ||
人の親として恥ずかしくないようなお父さんになりたい | ||
親の背中を見せて楽しく子育てをしたい | ||
大変さも楽しんで,一家で笑いが絶えない家庭を目指したい | 楽しい賑やかな家庭を作りたい | |
家族が多くなるので,柔らかさを活かして面白く楽しく暮らしていきたい | ||
子どもが元気で賑やかな家庭を作りたい | ||
みんなが仲の良い家庭を作りたい | ||
家族四人がそろった生活がずっと続いてほしい | ||
会話が途絶えず笑いがあり,素直な子どもが育てられるような家庭にしたい |
双子の父親は,希望していた子どもが双胎妊娠だと分かり嬉しい反面,二人を同時に育てる生活を想像することができない不安を抱えたアンビバレントな感情を持っていることを意味する.これは,≪双子の妊娠とわかり嬉しい≫,≪双子を同時に育てることが想像できず不安になる≫の2つのサブカテゴリーで構成された.
≪双子の妊娠とわかり嬉しい≫「たまたま二つ点が見えた時に双子になる可能性が高いって言われた時は,ラッキー,嬉しいなっていう感じでした.」(D氏)
≪双子を同時に育てることが想像できず不安になる≫「基本的に育てられるかどうかということや,経済的なものももちろんある.二人いるということがやっぱり想像つかないし,上二人は一人ずつそれぞれ,それでもかなり手がかかったのに,二人同時ってどうなんだろうかみたいな不安.」(B氏)
2) 【親のサポートと双子育児の情報で安心】双子をもつ父親は,双方の親からの育児のサポートや,双子育児の情報があると助かり,安心と感じていることを意味する.これは≪双方の親のサポートで安心する≫,≪双子育児の情報で助かる≫の2つのサブカテゴリーで構成された.
≪双方の親のサポートで安心する≫「一人では外に連れて行けないってところも二人いれば連れて行けるし.結構家のこともしてもらったり,人の手が二人いればかなり助かったのかなと思いますけどね.」(F氏)
≪双子育児の情報で助かる≫「(外食に)行ったら二人抱っこ紐しながら食べるとかがあったり,行ってもダブルのベビーカーここじゃ通らんねとかがあったり,そういう情報があったらいいなって.でも我々も双子が出来たから気づいたっていうのがあるんやけど,普通やっぱり多胎児の家庭っていうたら稀やん,だからニーズがないっていうのもちょっと分かるんですけど,情報とかちょっとしたことにすぐ見とってもらいたいとか,ちょっと預けるっていうところのその入り口だけでも広くしとってもらいたいなって.」(D氏)
3) 【大変な双子育児をしている妻へのねぎらい】双子の父親は,双胎妊娠や双子育児をしている妻の負担を目の当たりにし,それまであまり妻を助けていなかった自身を振り返り,妻の心身への関心と配慮を向けていた.そして,日々大変にしている妻をみて,感謝とねぎらいの気持ちを抱き,妻のためにできるだけの家事や育児をしていた.また,妻の表情や態度にも,双子育児のしんどさやイライラが現れることを当然の状況だと感じていた.一方で,多忙な育児環境の中でも,妻が双子の集いなどで社会に出る機会ができたり,楽しく過ごせている姿を見てほっとしていることを意味する.これは≪妻をねぎらう≫,≪妻のためにできる限りのことをする≫,≪双子育児で妻がイライラするのがわかる≫,≪楽しく双子育児をする妻を見て安心する≫の4つのサブカテゴリーで構成された.
≪妻をねぎらう≫「ほんと家内のお腹の中に二人入ってたんやっていうね,よう頑張ったなっていう感じですね.大変だったやろうなっていう.でも一番はやっぱり家内のねぎらいですかね.(中略)感動というより,ほんとに家内が二人お腹に入れてというか妊娠してるの大変だったなって,ほんとにお疲れ様っていう感じだった.」(D氏)
≪妻のためにできる限りのことをする≫「かなり負荷がかかったんだなと思って,できることはやらないかんなっていう意識は変わりました.(中略)(家内が)倒れたことを機にせないかんのかなっていう意識というか,助けないかんってなって.妊娠してるのにかなり負担かけたんだなと思ってちょっと悔い改めてですね,というのは感じました.」(D氏)
≪双子育児で妻がイライラするのがわかる≫「(双子が自宅に)帰ってきてしばらくは不機嫌だったと思う,不機嫌っていうか毎日がしんどかったんやと思う.二人いっぺんにミルク3時間おきにやって,寝かしつけておむつも変えて,半日以上を一人でしていたのは機嫌悪かった気がする.(中略)声はかけますよ,でもちょっとしんどそうというか,むすっとしとるというか,いたし方あるまいと.」(A氏)
≪楽しく双子育児をする妻を見て安心する≫「奥さん同士でちょこちょこ話したりとかしよるみたい,うちの人も.(中略)でもそういう機会があるんはええことやと思います,双子の教室で集まれるいう機会があるんはね.気分転換になっとるしね.」(A氏)
4) 【協力してやるしかない双子育児】双子の父親は,双子との生活に幸せを感じる一方で,嬉しいことだけでなく大変なことも全部倍になる生活を,妻とともに体験していた.また,生活が一変したことで当たり前にできていたことすらできなくなり,ストレスを発散する時間と場所がなくイライラを感じていた.双子育児は妻一人では手に負えない状況にあり,自分の自由時間をあきらめ,妻を陰で支える姿勢でいることや,協力してやるしかないと覚悟を決めたことを意味する.これは,≪双子育児は全部が倍で大変になる≫,≪ストレスの発散先がなくイライラする≫,≪子ども中心で自由な時間をあきらめる≫,≪妻と協力してやるしかない≫,≪陰で妻を支える≫の5つのサブカテゴリーで構成された.
≪双子育児は全部が倍で大変になる≫「よくいっぺんで終わるからいいじゃないっていう人いるじゃないですか,別にそれに対して嫌な気持ちになるとかは全くないですけど,苦労もいっぺんに来るから,結構金銭的にも二倍やし,一度にですからね.お風呂に入れる回数も二倍やし,全部二倍なので.双子でいいんですけどまあまあ大変ですよ.」(G氏)
≪ストレスの発散先がなくイライラする≫「無の時間がないんですよ,ちょっとテレビ見るとか,ゆっくり歯を磨くとか,ゆっくりトイレ行くとかそういう当たり前のことが.誰かが泣いたり,妻もイライラしてるし僕もイライラしてるから,なんか家族崩壊みたいな感じになりますよね正直.みんながイライラ.(中略)義理のお義父さんお義母さんもそうやし妻もそうですけど当たる場所もないので,時間もないから.」(I氏)
≪子ども中心で自由な時間をあきらめる≫「子ども優先の生活ですよねあたり前ですけど,自分のやりたいことはできないんでやっぱり,そこはもうあきらめましたけどね.」(I氏)
≪妻と協力してやるしかない≫「育児は大変ですね,物理的に二人いるじゃないですか子どもが.母親一人じゃ絶対まわんないですよ,もちろん頑張って一人でまわされてるお母さんもいるんですけど,基本的に手に負えないんですよね.どうしたって旦那の力がいるんですよ.(中略)双子以上の家って,旦那さん働かない,何かしないとたぶんまともにまわらないので,何かそういうのが,一人親の一人の子どもの家とは違うと思うんすよね,そういう状況が.どうしたって夫婦でやらないとどうしようもないみたいな感じだと思うんで.(中略)お母さんはもちろん大変なんですけど,たぶん双子のお父さんとかもまあまあ大変やと思いますよっていう感じはします.」(G氏)
≪陰で妻を支える≫「男ってやっぱり母親にはなれないと思うんすよね,だからあんまりそんなえらそげなことは言えんのですけど,よくほらあるじゃないですか,家庭でねその男性が働いて女性が何か縁の下の力持ちっていうか,何か逆の方がええんちゃうかなっていう気がしますよね,子育てとかにおいては.あーだこうだって言わずに.やっぱり母親にはなれないし.」(E氏)
5) 【仕事と育児の葛藤】双子育児の負担が妻にかかると気づきながらも,今後の将来や仕事での立場を考えると父親として仕事を犠牲にできない気持ちと,仕事と双子育児の両方どちらもできるようなバランスを取りたい気持ちとで葛藤がみられていることを意味する.これは,≪仕事は犠牲にできない≫,≪仕事と育児を両立させる≫の2つのサブカテゴリーで構成された.
≪仕事は犠牲にできない≫「自分が有休とか取れたり早く帰れたりできたら,それが一番いいですけど,仕事の方まで犠牲にするかっていう話もすごくあって,結局家庭を取るか仕事を取るかみたいな話になってしまうところもあって.結局僕は仕事をあまり犠牲にしてない,それはもっと自然にできたらいいんだろうけど,後何十年も勤めて行かなくちゃいけないしなってところもあって,そういう悩みはありますね.」(F氏)
≪仕事と育児を両立させる≫「どっちかと言うと仕事も好きですし,仕事の場も大事にしないといけないのもあるし,まだまだこっちに赴任してきて間もないのでやらないといけないこといっぱいあるので,仕事における環境でのバランスと家庭のバランス,その辺をだいぶ考えるようになりましたね,今まで以上に.」(H氏)
6) 【双子の一人一人を大事にした子育てをしたい】双子の父親は,双子が生まれてきたことに感謝の気持ちを抱き,自分の目で小さな二人を見て双子を実感していた.そして,双子との関わりをとおして双子のそれぞれの個性を大事にして,自分らしい方法で楽しい賑やかな家庭を作りたいと考えていることを意味する.これは,≪双子が生まれてきたことに感謝する≫,≪小さな二人を見て双子を実感する≫,≪それぞれの個性を大事にしたい≫,≪楽しい賑やかな家庭を作りたい≫の4つのサブカテゴリーで構成された.
≪双子が生まれてきたことに感謝する≫「私と嫁さんの子どもとして生まれてきてありがとうっていう,感謝じゃないですけどそういう,愛おしさじゃないですけども,そういう実感が抱っこをして思いましたね.(中略)ちょっと小さかったんですけどもそれ以上の重さっていうのを感じたのは思いましたね.特に二人だったので.」(H氏)
≪小さな二人を見て双子を実感する≫「生まれて病棟の方に運ばれるというか移動してる時に,一瞬写真だけ取らせていただける時間をもらって,触ったりとかはできなかったんですけど,短い時間でしたけど一人目の時も当然感動したんですけど,より二人だとほんとに双子なんだっていう驚きと嬉しさと両方でしたかね.(中略)もちろん双子ってわかって見ていたんですけど,より実感したというか.」(J氏)
≪それぞれの個性を大事にしたい≫「結局周りの双子の人とかも会ったりしたんですけど,やっぱり環境も違うしみんな,生活も違うので,(中略)しっかり向き合うことが大事やなと,周りがどうこうやなくて.」(I氏)
≪楽しい賑やかな家庭を作りたい≫「基本僕は楽しくやりたいと思うんで,一家で笑いが絶えないようなやっぱ目指していきたいですよね.だって楽しくなかったら嫌じゃないですか.(中略)大変大変って言よったら何か暗い気持ちになるけど,大変なんも楽しんで笑っていきよったら楽しくなるんちゃいますか.」(A氏)
【大変な双子育児をしている妻へのねぎらい】という体験において,双子の父親は日々大変にしている妻に対しねぎらいの気持ちを抱いていた.双子の父親は妻の心身への関心と配慮を向けていた(白坂ら,2013)ことや,双子を持つ父親が妻との相互支援があった(渡邉ら,2011)こと,また,双胎育児の実態で夫婦関係の変化がみられた(江草ら,1994)ことが明らかになっている.このことから,双子の父親が妻の大変さを理解するためには,妻の心身への関心と配慮を向けることと,妻との相互支援が必要であり,夫婦関係にも良い影響を及ぼすと考える.本研究における双子の父親は,「身体への負担を考えると素直に双子を喜べなかった」,「家内のストレスがたまって大変なので,できる限りの育児をやった」と語り,さらに双子育児をする中で,「小さい双子と一日中一緒にいると,家内がイライラするのもわかる」と育児体験の共感をしていた.このことは,双子育児の生活を妻とともにすることで,妻の心身への関心と配慮を向けることにつながったと考える.さらに木越ら(2006)は,単胎児の父親役割獲得プロセスの6段階の根底に,妻への気遣いがあることを報告している.本研究における双子の父親は,妻の心身への関心と配慮を向けたことで,あらためて自分以上に大変な育児をしている妻へのねぎらいの言葉や,態度の大切さに気付くことにつながり,このことが双子の父親の役割認識に影響を与えていると考える.また北岡ら(2002)は,双子の母親が父親に希望する情緒的サポートとして,「大変さを理解してほしい・認めてほしい」,「グチを聞いてほしい」が有意に高い項目であったことを明らかにしている.双子の父親が,日々双子育児をしている妻の大変さを認めることは,妻への情緒的サポートにつながり,夫婦関係にも良い影響を与えていたと考える.
単胎児の父親の文献ではあるが,森田ら(2010)は,初めて親となる男性が,母親として変化していく妊娠期の妻の姿に気づき,妻に協力しようと思う体験が産後の父親役割行動を考える契機になると述べている.また,双子の父親の文献では,育児において父親は妻と協力する必要性(渡邉ら,2011)があることや,必然的に育児に関わらざるを得ない状況が父親としての覚悟に影響していた(林ら,2012)ことが明らかとなっている.これらのことから,双胎の妊娠中から,父親が妻に協力しようと思う状況に置かれることが,双子の父親としての覚悟を持つことに大きく影響を与え,双子の父親役割行動につながっていると考える.本研究における双子の父親は,「双子を妊娠中の家内の身体の負担に気づき,助けたいと悔い改めた」,「安静入院で気が滅入っている嫁のために,できるだけ一緒に過ごせるよう努力した」,「妊娠中の奥さんがしんどい時は(笑わせたり家事や育児用品の準備をして)自分ができることはすべてやった」などを語り,妻の身体的負担を目の当たりにしたことで,今まで以上に,できる限りの家事や育児をやるしかないという覚悟を持つことに至ったと考える.さらに双子育児が始まると,「夜の三時間毎の授乳はさすがにこたえた」,「子どもがそれぞれ起きるので睡眠時間が少なくなり,仕事にならず困った」と語り,時間差や同時で押し寄せる双子の泣き声と授乳の対応に翻弄し,夜間の睡眠時間の確保が難しいという状況を感じていた.このことから,昼間に主体となって双子育児をしている妻が,少しでも睡眠時間が確保できるよう父親自身の睡眠を削るしかないという覚悟をしていたと考える.富安ら(2007)は,多胎育児が想像以上に大変なことを父親が認識し,覚悟を持つ重要性を述べていることからも,双胎妊娠が判明した時点から,双子育児の状況や覚悟を持つことについて伝えていく必要があると考える.
【親のサポートと双子の育児情報で安心】という体験において,双子の父親は,双方の親のサポートで安心を得ていた.今回妻が里帰り出産をしなかった4名は,妻の実家が自宅近くにある場合や,県外の実家から双方の親が短期間来たりしていた.妻の里帰り期間は様々であったが,双子の父親は双子育児の大変さを実感しながら,「双方の両親が来てサポートしてくれ,人の手があると助かった」と語っていたことからも,双子育児において双方の実家からの支援は重要であると考える.また,双胎妊娠中から妻の実家で同居をしていた1名は,「一人が泣くとみんな寝られず,睡眠時間を取れる工夫をした」と語り,夜間も義父母を含めた支援体制を取りながら,義父母への体調を心配していた.渡部ら(2019)は,双子の育児支援を行う祖母は,今まで通りの家庭生活に「孫二人の育児の繁忙さ」が加わるという責務が重なる負担があると述べている.このことから,双子育児の支援体制に実家を含める場合は,距離的な問題だけではなく,実父母や義父母の年齢と体調,就労の有無等の生活環境を考慮した上で検討する必要があると考える.また,本研究において双方の実家が遠方である場合は,ファミリーサポートや一時保育などの社会資源活用や,実家の親から支援を受けやすいように転居を考えていたものもみられた.昨年改定された産前・産後サポート事業(厚生労働省,2020d)には,多胎妊婦や多胎家庭のもとへサポーターを派遣し,産前産後において外出の補助や,日常の育児に関する介助等を行うことが内容として盛り込まれている.こうした事業や実家の親からの支援は,双子の母親と父親の身体的負担の軽減のみならず,精神的な安定にもつながると考える.
以上より,双子をもつ父親は,妻とともに想像していた以上に大変な双子育児をすることで,妻の心身への関心と配慮の重要性を実感していた.そして,あらためて自分以上に大変な双子育児をしている妻へのねぎらいの大切さに気付き,協力してやるしかない双子育児の覚悟を決めていたと考える.双子育児における負担は大きく,実家からの育児支援は双子の父親と母親双方の身体的・精神的負担の軽減につながっていた.家庭を取り巻く背景はさまざまであるが,専門職からの双子の育児支援体制への情報提供や,双子育児に対する覚悟を持つ重要性は,妊娠中から何度も働きかけていく必要があると考える.
2. 双子の父親の仕事と育児の葛藤【仕事と育児の葛藤】という体験において,双子の父親は仕事と育児のどちらにも向き合おうと葛藤していた.単胎児を対象とした文献で,親となる男性は,家族が増すことで家計を支える責任を高めると同時に,家庭内役割も求められ大きな負担を抱えることになる(森田ら,2010)ことや,父親は子どもができてから,仕事か育児か優先順位への迷いを感じている(森永ら,2014)ことが明らかとなっている.また,多胎児を対象とした文献では,多胎児の父親の仕事観として,「仕事は自分の自由な時間を奪う」,「子育て中は勤務時間を調整できる方がよい」の項目において賛成が多く,「育児休暇をとると昇進にひびく」の項目は反対が多かった(林ら,2012)ことが明らかになっている.このことから,父親は子どもが生まれることで仕事と育児の優先順位に迷いが生じ,さらに子どもが同時に増える多胎育児では,双子を育てる父親の負担は非常に大きくなると考える.本研究において,「仕事と育児は切り離して,割り切って両方するほうがいい」,「仕事と家庭のバランスを今まで以上に考えるようになり,家族の時間が増えた」との語りから,仕事と育児の両立を考えていた父親がみられた.その一方で,「妻が大変で申し訳ないが,将来を考えると仕事を犠牲にしたくない」,「先は長いので仕事は辞められない」という語りからも,仕事を犠牲にできないと考えていた父親がみられた.このことは,家族を支える父親として仕事と育児の優先順位を模索しつつ,双子育児でどうしようもない気持ちから,仕事と育児における葛藤を抱いていたと考える.
2019年の育児休業取得率(厚生労働省,2020a)は,男性7.48%,女性83.0%で,近年男性の取得率は増加しているものの,女性と比較して依然少ない.2019年の労働時間等実態調査集計結果(一般社団法人日本経済団体連合会,2019)より,2018年の年間平均時間外労働時間を月換算すると約18.6時間である.本研究の双子の父親は,育児休業を全員が取得しておらず,双子の出生時に有給休暇を取得したものは5名で期間は1~7日,平均残業時間は23.7時間/月と,2018年の月平均約18.6時間よりも多い傾向にあった.父親の育児時間の確保にはワークライフバランスの実現が課題(中村ら,2018)である.しかし,一度に子どもが二人増える双子育児においては,家族を支える責任を感じる父親の負担に対し,より配慮が必要であると考える. 以上より,双子をもつ父親は,仕事と育児のどちらも大事にしたいからこそ優先順位への迷いが生じたと考える.家族が増えたことにより双子の父親の負担は計り知れず,それゆえ抱える仕事と育児の葛藤は想像以上に大きいことが予測される.双子の父親の育児期を見据えたワークライフバランスについて,妊娠中から妻とともに考えられるような働きかけが,看護職にも求められると考える.
3. 双子の父親への期待と役割認識単胎児の父親の文献ではあるが,田中ら(2011)は,父親としての自覚をもつことと,子どもへの愛着が強いことが関連していると述べ,父親の役割を果たすときには,父性の自覚がその根底にあると報告している.このことは,父親の子どもに対する愛着が父親の役割を認識することに影響していると考える.本研究の双子の父親は,「自分が子どもとしっかり向き合うことが大事だ」,「双子それぞれの個性を見比べられることができて嬉しい」と語り,双子の個性を大事にしたいと感じていた.ワークライフバランスを模索している中にあっても,双子との生活でそれぞれの子どもへの愛着が深まり,父親自身が双子の父親としてこうありたい,このような双子育児をしたいと,父親なりに双子の一人一人を大事にする理想の家族像への期待を持つことにつながったと考える.また,「双子育児で視野が広がり,成長していることに気づく」との語りから,双子育児によって父親自身の成長を客観的にとらえているものもみられた.このことから,双子の父親としての自身への期待や,社会や家庭内から期待されることを認識することが,父親の価値観の変容に影響している可能性があり,このことが双子の父親の役割認識につながっていると考える.
本研究において双子の上に子どもがいた父親は4名であった.上の子の育児の経験と知識が,新たに生まれた子どもの育児に役立つことは十分考えられる.富安ら(2007)は,上に子どもがいる父親は,生まれた多胎の子どもの育児に手がかかり,上の子どもの相手が十分にできないことや家族の時間が取れないと述べており,育児経験を有していても,一度に子どもが増える多胎育児では余裕がなくなるほど手に負えない状況であると考える.本研究の父親も,「一人目の時とはわけが違い,二人同時に泣いたり寝かけても片方が泣くと,大人の手が足りず大変だった」と語り,双子のそれぞれへの対応が要求されることで終わりのない双子育児の大変さを実感していた.阿川ら(2020)は,父親役割の概念分析において「家族システム内に存在する夫婦関係や父子関係に対し,社会の要請にも応答しつつ,父親として葛藤しながらも責任をもって関わり続ける」と父親の役割を定義している.双子の父親は,単胎の父親とは違う役割を期待されることへの葛藤も抱いていた可能性が考えられる.これらより,上の子の育児経験がある父親でも,双子を初めて育てる父親として支援することが重要と考える.
以上より,双子の父親はワークライフバランスを模索しつつ,父親なりに双子一人一人の個性を大事にする理想の家族像を期待していた.このことは,双子をもつ父親の価値観の変容と,双子の父親の役割認識につながっていると考える.そして,単胎児の育児経験がある場合でも,双子を育てることは初めての経験であり,双胎妊娠中から双子の父親役割取得促進に向けた支援が重要であると考える.
双子をもつ父親は妻の妊娠が分かった時,夫婦ともに,【双胎妊娠の喜びと育児の不安】を抱いていた.そして,双子育児が始まると,【親のサポートと双子育児の情報で安心】と感じながらも,手に負えない育児をしている妻をみて,あらためて,【大変な双子育児をしている妻へのねぎらい】の大切さに気付き,【協力してやるしかない双子育児】を覚悟した.また,双子をもつ父親は,【仕事と育児の葛藤】を抱きながらも次第に,【双子の一人一人を大事にした子育てをしたい】という父親役割を認識する体験をしていた.
2.双子の父親は妻とともに双子育児をすることで,妻の心身への関心と配慮の重要性を実感し,協力してやるしかない双子育児の覚悟を決めていた.またワークライフバランスを模索しつつ,父親なりに双子の個性を大事にする理想の家族像を描いていた.双子をもつ父親の体験は,価値観の変容と双子の父親の役割認識に影響していた.
本研究を行うにあたり,ご協力いただきました研究協力団体の代表者様,そして快くご協力くださいました研究対象者の皆様とご家族に深く感謝いたします.
本研究における開示すべき利益相反は存在しない.
著者資格について,ENは,研究の着想およびデザイン,データ収集,分析,原稿作成に貢献;CKおよびEIは研究の着想,デザイン,データ分析,草稿作成に貢献;SMは研究プロセス全体への助言および原稿への示唆.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.