日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: sympo2
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シンポジウム2
一般病院の立場から
早川 富博
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抄録

 平成16年から新医師臨床研修制度(新研修医制度と略す)が始まり,勤務医の動向?地域における医師不足,とくに勤務医師の地域格差?に大きな影響を及ぼしている.これが一時的なものか現時点では不明であるが、拡大する医師の地域偏在は,病院医療の後退・撤退をさせている現実がある.研修病院へ医師が集中する現状で,一般病院の中でも,いわゆる田舎の病院における医師不足に対する解決策の1つとして,研修医制度への関わりについて述べたい.
<新研修医制度におけるへき地医療支援機構の関わり>
 愛知県にもへき地・離島医療は現存し,その医師不足は現実的問題であり,へき地医療支援機構が中心となって,その解決に取り組んでおり,新研修医制度発足に伴い,へき地医療の現場を研修医に体験してもらうことが,へき地医療に関する理解を広げ,将来的に,へき地医療における医師確保の布石になると基本的に考えた.平成17年からへき地医療拠点病院と関連するへき地診療所が,協力型臨床研修病院および研修協力施設となり,新制度における地域保健・医療研修の必須枠として,へき地医療臨床研修プログラムを提供してきた.研修医受け入れ窓口はへき地医療支援機構が中心となって調整を行なっている.
<足助病院におけるへき地医療臨床研修プログラムと研修実態>
 へき地の特徴を知る目的で,へき地診療(検診主体)の実施,訪問診察・看護・訪問リハビリへの同行と実施,通所サービスの利用者送迎,療養型病床での患者様担当を中心に,1週間単位のプログラムを導入,実施内容の報告と意見交換を毎日指導医と行い,研修終了日には指導医が直接研修医本人に評価を伝えている.当院でのへき地医療臨床研修の希望は1週間単位,2週間単位,1ヶ月単位に分かれており,連携する臨床研修病院の意向に沿っている.平成17年度の実績では,1週間の研修が32名,2週間が9名,1ヶ月が4名であり,合計45名の2年目研修医が当院のプログラムに参加した.研修医に,当院における研修の満足度,新研修医制度に関する満足度,今後当院に勤務する意思があるかどうか,などのアンケートをお願いした.
<今後の方向>
 へき地医療の将来にわたる人材確保を目的に,新制度における地域保健・医療研修の必須枠として,へき地医療研修プログラムを提供してきた.平成17年度は45名であったが,平成18年度は愛知県全体で99名(当院が57名),平成19年度は全体が121名(当院が65名),平成20年度は全体が131名(当院68名)の予定であり,このプログラムが県下の臨床研修病院に認知され始めていると考えられるが,へき地医療臨床研修が遠い将来の医師確保に貢献できるかどうか心もとない.しかし,研修経験者の1%でも将来的に勤務を希望してくれれば2年に1人の医師を確保できることになると夢想しながら,情報発信を続けることが必要と考える.

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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