日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2E01
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一般演題
人間ドック受診者における脂肪肝とメタボリックシンドロームの検討
伊藤 富雄松下 次用成瀬 貴之土屋 重義野坂 博行大林 浩幸吉田 正樹林 弘太郎山瀬 裕彦平石 孝
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抄録

<緒言> 当院健康管理センターの人間ドックでは、スクリーニング検査として腹部超音波検査を行っている。腹部超音波検査において、最も多い検出所見は脂肪肝であり、内臓への脂肪蓄積として捉え、メタボリックシンドローム(内臓脂肪蓄積、糖・脂質代謝異常、高血圧)の一病態でもあると考えた。脂肪肝有所見者群におけるメタボリックシンドロームの存在実態を調査した。対照として非脂肪肝所見群と比較検討したので報告する。
<方法> 平成16年7月より平成17年4月の間に、当院健康管理センターにおいて人間ドックを受診した3,188名(男性2,025名、女性1,163名)の中で、腹部超音波検査受診者2,566名を対象とした。(1)肝実質高エコー像(2)肝・腎・脾コントラスト陽性(3)肝深部エコー減衰増強の所見を脂肪肝と捉えた。
 脂肪肝群455名(男性352名、女性103名),年齢(男性33才から79才平均52.4才・女性30から78才平均50.6才),非脂肪肝群1,695名(男性952名、女性743名),年齢(男性30才から78才平均48.2才・女性30才から81才平均47.2才)。
 メタボリックシンドローム診断は、日本動脈硬化学会などにおける診断基準(腹囲周囲径:男性≧85cm・女性≧90cm、これら所見に加えてトリグリセライド≧150mg/dlかつ/または低HDL<40mg/dl。収縮期血圧≧130mmHgかつ/または拡張期血圧≧85mmHg。空腹時血糖≧110mg/dl。以上の検査値を2項目以上有すること)を適用した。
<結果>
I. 腹部超音波検査有所見実態
 腹部超音波検査総数2,566名中、有所見者数は1,564名(60.95%)であった。その内訳は以下のとおりで、多所見順位は(1)脂肪肝:455名(29.1%),(2)胆嚢ポリープ:282名(18.0%),(3)肝のう胞:206名(17.5%),(4)腎のう胞(右・左):192名(12.3%),(5)腎ストロングエコー(右・左):69名(4.4%)などとなった。
II.脂肪肝群と非脂肪肝群におけるメタボリックシンドロームの存在実態
 脂肪肝群の腹囲:男性85cm以上・女性90cm以上は、男性352名中254名(72.2%)女性103名中29名(28.2%)であった。
 非脂肪肝群の同腹囲:男性952名中344名(36.1%)女性743名中35名(4.7%)であった。診断基準に従い診断された脂肪肝群のメタボリックシンドロームは、男性78名(30.7%)女性9名(31.0%)であり、高血圧を有する症例が、男性67名(85.9%)女性9名(100%)と高率にみられた。
 非脂肪肝群のメタボリックシンドロームは、男性952名中73名(7.7%)女性743名中6名(0.81%)であり、高血圧を有する症例が男性73名中62名(83.3%)女性6名中5名(83.3%)と高率にみられた。
診断基準の腹囲異常と代謝異常1項目を有する症例は、脂肪肝群男性254名中95名(37.4%)女性29名中10名(34.5%)。非脂肪肝群のそれは、男性344名中108名(31.4%)女性35名中14名(40.0%)みられた。
<考察> 内臓脂肪蓄積とメタボリックシンドロームをリンクする意義として、脂肪肝は効果的に役立つ所見であるとおもわれた。脂肪肝群・非脂肪肝群の双方ともに、高血圧を伴うメタボリックシンドロームが高率にみられ冠血管危険因子に影響を与えている可能性が高いといえる。予防医学や管理・治療などにおいて生活習慣の改善が重要な課題となる。

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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