日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2E28
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一般演題
フライトナースとして求められること
岩崎 弘子日向 美佐江砥石 智甘利 雅子木次 光重田 美保新井 祐子北岡 宏太松井 孝仁岡田 邦彦
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抄録

<はじめに>ドクターヘリシステムは、救急現場活動と施設間搬送を主目的とした病院外救急医療システムである。前者は、ヘリコプターで救急現場に医師・看護師を派遣し、初期治療の早期開始と決定的治療までの時間短縮を目的としている。信州ドクターヘリは、国と長野県の補助事業であり、当院を基幹病院として、平成17年7月より全国で10番目に運航が開始された。広大な長野県内を夏はラグビー外傷、冬はスキー・スノーボード外傷と徐々に出動実績も上がっている。
 フライトナースとは、ヘリコプターに搭乗し、院外で医療活動を行う看護師のことである。信州ドクターヘリでは、当院所属の看護師経験5年以上、救命救急センター・ICU(以下ICUとする)経験3年以上のリーダークラスの看護師で、ドクターヘリ講習会を受講しているという基準を設けている。当院は屋上ヘリポートが設置されており、ドクターヘリ導入前より防災・県警ヘリの受入を行っている。ヘリ搬送患者のほとんどが、ICUに入院していること、ヘリポートの下の階がICUであり、要請から出動まで時間がかからないという条件から、現在のフライトナースはICUスタッフの中から9名選出されている。しかし、病棟スタッフであるため初療経験に乏しく、初期治療に関する経験・知識不足という大きな課題があった。この課題に対し我々は、研修などで自己研鑽し事例検討を行いながら、現場経験を重ねつつ活動している。
<目的>今回、信州ドクターへリ事業におけるフライトナースの役割を検討する。
<方法>平成17年7月より1年間の信州ドクターヘリ運航実績の中で、現場活動におけるフライトナースの役割について集計し、その課題も含め検討した。
<結果>活動内容の集計では、モニター管理・酸素投与・静脈路確保・薬剤投与・気管挿管介助・バイタルサインの測定・記録などが多く行われている。その他、家族看護・現場調整などである。
<考察>救急処置の多くは、ICU内業務と一致している事が多い。しかし、救急現場は院内のように、人員、医療物品、場所が十分に確保されているわけではない。そのため、限られた人員、物品、場所でフライトクルー、救急隊と協力しながら、臨機応変に活動を行う必要がある。
 フライトナースは現場活動をスムーズに行なうために、日頃の看護から救急現場を意識し、予測、準備、即応力、判断力を磨き、時には機転を効かす能力を養う。また、事例検討やシミュレーションを重ね、情報の共有化を行い、患者の安全を確保する管理方法を考えていかなければならない。
 現場調整には、1)患者・家族、2)救急隊、3)フライトクルー、4)他病院に対するものがある。日頃から患者・家族看護、スタッフコミュニケーション、他病院・消防機関との連携で、確実な情報連絡や現場調整能力を携えていかなければならない。
 患者に起こりうる事態の予測をし、五感を使った観察力、患者を安全に搬送するための管理、現場調整、家族看護がフライトナースには求められる。
<おわりに>フライトナースの役割は「患者管理」「家族看護」「協働」「調整」である。今後も、当院におけるフライトナースが救急現場に行く意義を考え、救急医療の質の向上を図りたい。

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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