日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: workshop1
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ワークショップ1
一般病棟における身体拘束のあり方
松川 寿恵大塚 孝子黒瀬 順子
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抄録

 今、医療の現場は安心・安全で良質なサービスの提供を目指している。患者の声に耳を傾け、更に満足がいく医療を提供する為に取り組んでいる。 
 安心・安全の提供は、医療者側だけの取り組みでは困難な場面もある。一例として療養上の世話の中で挙げられるのが、転倒・転落である。当院において、平成16年度のヒヤリハット・事故報告書においても91件と多い。この転倒・転落を予防する対策としてアセスメントシートがあり、安全を守るために離床センサーの使用・身体拘束をせざる負えない状況がある。この身体拘束に関しては、転倒・転落予防の他に必要な処置を遂行する為であったり自傷行為の予防などの目的がある。患者の安全を守る為に行う行為ではあるが、拘束するという行為への看護師のジレンマも存在すると考える。どのような状況・時期において“倫理”を感じ、ジレンマとして生じるのか。そのような状況の場において、どのように対処しているのであろうか。急性期医療の場においては、ある程度の期間が過ぎれば患者の状況も安定され日々の“拘束の必要性”もなくなる。しかし、一般病棟における患者の状況はまた異なってくる。一般病棟においては、急性期の患者・慢性期の患者・終末期の患者が混在する。終末期の患者の不穏・せん妄の状況に対して、勿論患者の安全を守るためではあるが“拘束”をせざるをえない状況がある。本当に拘束することが正しいことなのか疑問に感じることが多々ある。これは、看護師と医師とではまた安全と倫理という面では捉え方の差があるのではないかと考える。医師も患者の安全といのちを守るために身体拘束は必要であると考えるが、看護師は実際に拘束をする立場であり患者の“声”を聴いている立場にあり患者の人間としての尊厳という点では医師よりも考え悩む比重が大きいと感じる。患者の実際の“声”はいろいろであるが、拘束をせずとも傍にいることで患者の不穏・せん妄状態が落ち着くことはある。しかし、一人の患者にどれだけの時間を費やしていけるのか、急性期医療を必要としている患者が存在する病棟の中で、終末期の患者の精神的看護はあとまわしになる。傍にいたくてもいれない状況の中で、不穏患者に対してやむをえず拘束をせざるをえない状況があるのが現状である。拘束の方法も、患者のその時の状況を看護師が判断し寝衣のみの拘束であったり手袋(ミトン)をせざるをえない状況もある。  
 急性期医療と終末期医療が混在する病棟の中で、身体拘束をどう捉えていくか患者の人間としての尊厳を守り安全を守るということはどういうことなのかということを、常にチームの中で検討していき患者個々に合わせた細やかな配慮をしていく必要がある。

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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