日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2G203
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一般演題
肺がん化学療法を受ける患者の思い
- 繰り返し化学療法を受ける患者への面接をKJ法で分析して -
北口 文子中村 千織
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キーワード: 化学療法, 副作用, KJ法
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抄録
<はじめに>
 近年、肺がんの罹患率は増加傾向にある。抗がん剤は、がん細胞と同様に正常細胞に対しても強い毒性を示し、それが副作用となって出現するため、身体的苦痛が大きい。また、化学療法を受ける患者は病名告知を行っていることがほとんどで、予後への不安等精神的苦痛も大きいと考えられる。
そこで、化学療法に対する患者の思いと繰り返し化学療法を受ける患者はどういう思いで入院治療を受けているのかを明らかにしたいと思い、研究に取り組んだ。
<研究方法>
 対象者は呼吸器内科病棟で化学療法を受けた肺がん患者のうち、研究目的を説明し承諾が得られた患者、男性4名・女性2名(3ー9クール)とし、平成17年9月ー10月の期間で実施した。
調査内容と方法は、半構成的質問用紙を作成し、それに基づき研究者が面接調査を行い、内容を記録。なお、面接場所はプライバシーの保てる個室とした。
1)倫理的配慮:倫理綱領に基づき同意の得られた患者に対して行った。また、比較的全身状態の落ち着いている時期に施行した。
2)分析方法:川喜田二郎の提案した発想法(以下KJ法)を用いて分析した。信頼性を確保するため、遂語録の中から患者の心理状況を示す言葉をラベル化し、意味内容の類似した言葉を集めた。
<結果>
1)治療を受けるにあたって、医師から病名・治療の説明を受け、ショックが大きいが前向きな気持ちをもって治療にのぞむ人と、悲観的な思いをもちながら治療にのぞむ人がいた。治療を受ける支えとして、医師からの言葉の支えや納得できる説明が背景にあった。一方で、分からないという意見や世間での偏見が不安を助長させているケースもあった。
2)治療中に関しては、普段気にならないような点滴時間や足音、臭い等環境に対して過敏になっていた。副作用が出現するとコーピング行動をとったり、セルフケア行動をとったりするケースがあった。一方で、悲観的な思いを持ち続けているケースもあり、家族や医師・看護師の対応が支えになっていた。今後の生活について、目標を持つ人や、他の同病者が入退院を繰り返すのを見て不安を抱く人がいた。
<まとめ>
1)化学療法を受ける際は、病名告知による極度の緊張や不安により理解を得られにくいため、患者の治療の受けとめ方を確認したフォローが必要である。
2)繰り返し化学療法を受ける患者の思いには、前向きな思い(意欲)と悲観的思い、不安、支え、今後の生活に対する思いがあった。そして、死への恐怖を抱き、初回時と心理変化が生じていた。
3)繰り返し化学療法を受ける患者は、治療を重ねる毎に増強する身体的苦痛と、病気や予後に対する不安等精神的苦痛を抱えながらも自分なりに病気や治療を受けとめ、周囲の支えを得て、気持ちを切り替えながら治療に臨んでいる。それには、患者が自分の思いをまとめられるよう関わることが必要である。
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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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