日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2G302
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一般演題
けいれん重積型脳症の臨床的検討
渡辺 章充赤羽 桂子片桐 朋子山田 均山本 敦子黒澤 信行渡部 誠一
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キーワード: 脳症, けいれん重積型
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抄録

<はじめに>近年、けいれん重積で発症したあと数日経ってからけいれんの群発を起こすという二峰性の経過をとり、発症数日後の頭部MRIにて拡散強調画像で皮質下白質に高信号域をみる急性脳炎脳症が報告され、けいれん重積型脳症として臨床的に特有な病態として考えられるようになってきている。厚生労働省インフルエンザ脳症研究班のガイドラインでは、インフルエンザ脳症の特殊型としても「けいれん重積型」が記載されている。今回、当科で経験したけいれん重積型脳症及び類似の脳炎脳症の臨床経過・画像所見・予後について検討したので報告する。
<症例・臨床像>当科において2003年9月から2006年3月に経験した、けいれん重積型脳症3例(A群)、発症時のけいれんは重積ではないが、画像所見やけいれん群発がけいれん重積型脳症に類似していた急性脳炎脳症3例(B群)について後方視的にカルテを基に検討した。年齢はA群11ヶ月、12ヶ月、14ヶ月、B群8ヶ月、12ヶ月、20ヶ月。発症までに明らかな発達異常を指摘されていた例はなかった。全例けいれん発作で発症、A群3例のうち2例は入院時に人工呼吸管理を要した。B群の2例は入院時は複合型熱性けいれんの診断、1例は単純型熱性けいれんだった。全例でけいれん発作は入院時の治療(ジアゼパム、フェニトイン、ミダゾラム)で抑制され、2日目には小康状態が保たれていた。しかし、初回けいれんから3から5日目に短いけいれん発作(複雑部分発作もしくは強直発作)が群発した。けいれん群発はA群はリドカインで、B群はフェニトイン1例、フェニトイン+フェノバール2例でコントロールされた。A群の2例は発症24時間以内にステロイドパルス療法とうち1例には軽度低体温療法が施行され、AB合わせて5例で経過中にステロイド剤が使用されていた。
<画像所見・脳波>入院時に全例頭部CTが撮影されているが明らかな異常所見はなかった。頭部MRIは、入院翌日に撮影された2例は異常を認めず、3日目以降に撮影した全例で(入院翌日異常なしの2例の再検も含む)拡散協調画像で異常信号域を認めた。B群に比してA群の異常信号域は白質中心で範囲も広かった。B群の発症初期の脳波は、薬剤の影響を加味して、異常なしから境界レベルの評価で脳炎は否定的とされていた。
<予後>A群は全例で知的運動発達が退行し、発達障害を遺した。B群も急性期には退行したが、その後回復し、2例はほぼ正常発達、1例が軽度の発達障害を認めていた。
<考察>けいれん出現が二峰性、頭部MRI拡散強調画像での異常という特長をもつ脳炎脳症では、やはり発症時にけいれん重積をするほうが、画像所見の異常も強く、予後が悪い傾向があった。インフルエンザ脳症で予後改善効果が期待されるステロイドパルス療法を施行しても発達障害は遺しており、今後は治療法に関しての検討が必要である。また、重積を示さない例は、発達退行を認めるものの、初期の画像や脳波に異常が乏しく、発症時には熱性けいれんとの区別は困難であった。画像検査のタイミングの他、早期診断の指標をみつける必要がある。

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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