日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2G411
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ブロー氏液(13%酢酸アルミニウム液)の製剤法の関する考察
安保 忠明吹谷 佳奈子伊藤 郁恵伊藤 紫野佐々木 真則福岡 英喜
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抄録

<目的および方法>ブロー液(ブロー氏液)は、19世紀の医師Burowが考案した酢酸アルミニウム液であり、皮膚の防腐および収斂、湿布薬として用いられた(ステッドマン医学大辞典より)。
 その後、1998年にThorpらがブロー液(13%酢酸アルミニウム)を慢性化膿性中耳炎の患者に点耳し著効を得たとする報告により注目され始めた。
 近年、わが国においても寺山らによるブロー液の使用経験が日本耳鼻咽喉科学会会報に掲載され、その有用性が再評価されるようになり耳鼻科医の関心を集め、薬剤科への製剤依頼となった。
 しかしブロー液に関する情報は少なく、製剤法に関しても不明な点が多い製剤であるが検索を行った結果、3種の処方(レシピ)を情報収集することができた。
 一つは、病院薬局製剤「第2版」(日本病院薬剤師会編)に8%酢酸アルミニウム液として収載され、一つは、USP27局にAluminium Subacetate Solution(濃度不明)、そしてThorpらが報告したとされる13%液である。
 それぞれの処方は濃度が異なる製剤法であり、さらに反応させる薬剤は同じであるが、反応量(モル量)が必ずしも一定しないことより目的とする濃度(13%)が得られるか疑問であった。このことから我々は、酢酸アルミニウムの製剤法に関して、(1)化学反応式を完結させること、(2)反応式に基づいた必要なモル濃度を算出すること、(3)13%となる反応量を決定することが必要であると思われた。
<結果>酢酸アルミニウム生成のための化学反応式は、はじめに硫酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酢酸を反応させ、塩基性酢酸アルミニウム(Aluminium Subacetate)が生成される1つの式と、さらに生成された塩基性酢酸アルミニウムに酢酸を加えることにより、目的とする酢酸アルミニウムが生成される2本の化学反応式からなることが判明した。これら二つの反応式に基づいて、13%となる必要反応重量を算出した。
 酢酸アルミニウム13gを生成するための必要モル濃度は計算の結果31.9mmoLが反応しなければならない。よって、それぞれの反応式に代入し必要量を求めると、硫酸アルミニウム10.9g、酢酸(33%酢酸液35mL)、炭酸カルシウム9.6gが反応し、全量100mLとすることで目的の濃度が得られ製剤法が完結した。
<考察>13%酢酸アルミニウム液を製剤するために化学反応式に基づきモル重量を算出した。この結果で得られたモル重量をもとにUSPなど他の製法に記載されているレシピを比較検討した結果、目的の濃度が得られていないことが想定される。
 なお、本製剤を院内で臨床使用するには、PL法に基づいた審議が必要と思われる。

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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