日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2G505
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一般演題
注射調剤業務における安全性向上への取り組み
市川 智之飯島  宏子常盤  英文
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抄録

〈緒言〉近年、注射薬による薬剤の取り違えや投与量ミスによる医療事故が報告されている。確実な調剤を行い患者へ安全な注射薬の提供のため薬剤師が担う役割は重要であり、各医療機関においてリスクマネジメントの観点から様々なシステムが構築されている。当院では2003年1月よりオーダリングシステムを導入し、それに伴い薬剤部では薬剤部門システムを使用した注射調剤を行っている。2005年7月からは抗がん剤調製システムと連動したシステムを構築し、病棟および外来の抗がん剤の混合調製業務も開始している。今回、当院における注射薬オーダリングシステムと運用評価、今後の課題について検討を行った。また、TPN用高カロリー輸液調製においても業務改善を行ってきたので報告する。
〈方法〉当院注射オーダリングシステムは医師がオーダー入力後、注射部門システムに情報が流れる。注射調剤室からのデータ出力により処方箋、ラベル発行システムを経由し無菌製剤室、抗がん剤調製室にてそれぞれ調製が行われている(図1)。

抗がん剤調製では4人の薬剤師が調剤から混注までに関与し、患者の安全確保へより詳細なチェックを可能とした。オーダーの処方入力締め切り時間は平日14時、土曜11時とし、休日分の高カロリー輸液については糖・アミノ酸製剤や電解質類、微量元素のみを混注し、抗がん剤調製は行っていない。高カロリー輸液用ラベルは手作業で作成していたが、作成ミスによる混注ミスを無くすため、データ出力時に自動でラベルに印をつけるよう改善を行った。
〈結果・考察〉注射箋枚数は平均370枚/日、TPN用高カロリー輸液は平均76件/日であった(2006/3月)。注射調剤件数は増加しているが、これは対象病棟の拡大や2月から開始されたバーコードによる照合システムも影響していると思われ、今後もさらに業務量の増加が予想される。現在のシステムでは業務スペースの関係もあり、各調剤室へデータが送られそれぞれの薬剤師により詳細なチェックを可能としてはいるが、病棟へ薬品の搬送される時間がそれぞれ異なるなどの問題もある。このため、今後は業務に応じた人的な流動性も持たせ、効率を高めていかなければならない。高カロリー輸液調製においては、自動的に混注する薬剤に印を付け、手作業を入れないことにより薬剤の混注ミスが無くなった。また、ラベルの張り間違いを防ぐ為、間違いやすい薬剤については蛍光ペンによる識別を開始した。蛍光ペンは消毒用エタノールによる滲みも無く、油性マジックに比べ無菌製剤室での使用には適していると思われる。
 今後もさらに運用面の整備や薬剤支援システムの充実をはかり、さらなる安全性の向上に取り組んでいきたい。

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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