日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1C06
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一般演題
輸液ライン事故防止対策とその効果
事故減少につながった要因と安全担当専従者の関わり
加藤 久美子
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抄録

<はじめに>平成15年度から、チューブドレーンに関する事故防止対策を検討してきた。事故の大半は、自己抜去など患者要因が主であったが、接続はずれや接続間違いなど職員が要因となっているものがあり報告が続いていた。これらの事故を減らすための安全対策やシステム作りが必要であることから、安全担当専従者が中心となり、輸液ライン検討小委員会を設け、輸液ラインシステムと管理全般の見直しを行った結果、セーフテイレポートの減少が見られた。事故防止対策立案の経過をまとめ、事故減少の要因を分析したので報告する。
<方法>調査期間:平成15年4月1日から平成18年3月31日。調査対象:平成15年度から17年度に提出されたチューブドレーンに関するセーフテイレポートと当事者。
分析方法:1.チューブドレーンに関するセーフテイレポートの内容を分類する。2.セーフテイレポートから職員が要因となっている内容を読み取る。3.輸液ライン事故防止対策実施前後で内容を比較検討する。4.安全担当専従者の関わりを振り返る
<輸液ライン事故防止対策の立案>輸液ライン検討小委員会は、医師・看護師・薬剤師・臨床工学技士・感染対策委員・事務職員・安全担当専従者からなる。事故防止対策は、医師や薬剤による取り決めの違いを最小限に集約し、物品在庫とコストの削減、安全性の確保を目的に検討し、輸液ラインアイテムを29種類から16種類に削減した。ラインを単純化・標準化し、病棟外来・医師や科による違いを無くした。輸液管理ガイドラインを作成し、輸液ラインに関する考え方を明記し、平成16年5月制定し、実施した。
<結果>チューブドレーンに関するセーフテイレポートは15年度123件、16年度289件、17年度394件であった。発生内容別で接続間違い、接続外れなど職員が要因となっていたものは、15年度26件(19.5%)、16年度3件(1%)、17年度11件(2.8%)であった。職種別では、医師が1件で他は全て看護職であった。事故防止対策実施前では、医師や薬剤の違いによる取り決め事項が複雑で混乱する状況があり、確認不足・ルールの省略など習慣的な要因と思い込みや知識不足など複数の要因が重なり事故に繋がっていた。事故防止対策実施後では、作業方法やルールが統一され、業務の簡素化・標準化がはかられ事故は減少した。しかし、新人ではルールは知っているが根拠は理解できていず、中途採用者ではルールを知らない・前職場の経験で行っていた等があった。そのため、安全担当専従者が、事故防止対策の周知と教育を医師には集団で、看護職には個別に実施した。
<考察>事故防止対策は、根拠を明確にし、病棟外来・医師や薬剤による違いを無くし、アイテム数の削減と作業の単純化・標準化を図る事が出来、単純で覚え易く正確な作業実施に繋がった。事故は個人ばかりでなく組織の中でおこるものとの認識から、ルールを根本から見直し、失敗そのものが出来ないシステムや誰でも共通理解できるルールを作った事が大きな成果を得た。しかし、新人は不確実な技術や知識不足があり、中途採用者は職場の受け入れ準備不足でルールなどの情報提供が不十分な状況であった。ルールを周知し安全を担保するため、安全担当専従者が定期的な集団指導と個人指導を繰り返し知識と技術の確認を行ったことは、時間の経過によるルールへの意識低下や職員の入れ替えによる周知不足を補う効果があった。

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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