日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1C16
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一般演題
整形外科疾患患者の自発痛に対する広帯域多重複合波治療の即時鎮痛効果
改変型日本語マギル痛み質問票を用いた鎮痛効果の検証
櫻田 圭介嶋田 誠司岸野 美代子佐藤 嘉寿袴田 佳奈恵佐藤 毅
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抄録

<はじめに>広帯域多重複合波治療(以下テクトロン)は、ペインクリニックで利用されるなど、高い鎮痛効果を期待されている。テクトロンの治療効果については、疾患別に調査した報告はあるが、どのような痛みの種類に対して即時鎮痛効果があるのかを述べた報告はない。
 そこで、本研究では、目的を整形外科疾患患者の自発痛に対するテクトロンの効果を知ることとし、テクトロンの施行直前・直後の痛みを評価し、即時鎮痛効果を検証したので報告する。
<対象と方法>対象は自発痛を有する整形外科疾患患者8名(男性4名・女性4名、平均年齢55.5歳)である。診断名は、肩関節周囲炎4名、腰椎疾患2名(変形性腰椎症、腰椎分離症)、肩甲骨・鎖骨骨折術後、半月板亜全摘出術後がそれぞれ1名であった。発症日(術後の患者は術日)から測定日までの平均期間は793日であった。
 治療器機は、株式会社テクノリンク社製「スーパーテクトロン HP400」を用い、治療モードはAモード、治療時間は20分に統一した。治療部位は、自発痛を呈する部位とした。痛みの評価は、テクトロンの施行直前、直後の計2回、「改変型日本語マギル痛み質問票」を対象者に記述させ、痛みの強度と質感を数値化した。
 統計解析は、ウイルコクソンの符号付順位和検定を用い、施行直前と直後の数値を比較した。なお、有意水準は5%とした。
<結果>痛みの強度は、施行直前では5.18±2.49cmであったが、直後で3.33±3.01cmとなり、有意に低下した(P<0.05)。痛みの質感は、施行直前では13±4.75点であったが、直後で6.38±3.25点となり、有意に低下した(P<0.05)。
<考察およびまとめ>本研究結果は、テクトロンが整形外科疾患患者の自発痛に対し即時鎮痛効果を有することを示唆した。この即時鎮痛効果のメカニズムは以下であると考える。花岡は、痛みは侵害刺激が侵害受容器を刺激し、その刺激が知覚神経を介し脊髄や大脳で処理され、筋攣縮や血管収縮が起こり、局所乏血が引き起こされるために発痛物質が発生し、それが再び侵害受容器を刺激するという悪循環が繰り返されるメカニズムで発生すると述べている。これに対し、平野は、テクトロンの治療仮説は、知覚神経に対する神経ブロック(ウェデンスキー抑制)、また、中枢では脳内ホルモンであるβ-エンドルフィンが放出されることで疼痛が抑制される、いわゆる内因性鎮痛作用、さらに、筋ポンプ作用や血管拡張作用による循環の改善であると述べている。したがって、上記の痛みのメカニズムに対し、上記の治療仮説が作用したことで、即時鎮痛効果が得られたと考える。
 テクトロンに関する過去の報告では、肩関節周囲炎や変形性腰椎症および変形性膝関節症に対し即時鎮痛効果を認めており、本研究結果も同様にテクトロンの即時鎮痛効果を支持していた。一方、上記報告では、対象患者がどのような痛みを有するのか、痛みの種類についての記載がなかった。本研究結果は、テクトロンは整形外科疾患患者の疼痛の中で、少なくとも自発痛に対し即時鎮痛効果を有することを示唆した。 

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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