本論文では,高度経済成長期の挙家離村による不在地主問題の深刻化が危惧される地域において,継続的に農地が利用されてきた要因を解明する.現在の不在地主の状況を整理したうえで,不在地主と耕作者間の関係性を地 代,および土地改良投資の実施状況から検討した.その結果,地代支払いのうち,特に物納を通じて不在地主と耕 作者間の関係が構築され,土地改良が実施可能となり,農地が適切に利用されていた.その背景には,現在の不在 地主は農地所在地で生まれ,一定期間の居住経験があることがある.今後,受け手の高齢化や地権者の世代交代に より,不在地主問題が表出する可能性も判明した.