本研究は,団体パッケージツアーに参加している中国人観光客が日本滞在中,日本の食にどの程度接し,どのような食事を取っているかを明らかにした。かつてはインバウンド旅行会社側のオペレーションを優先するために,中華料理店がよく利用されていたが,近年では,変化した観光客のニーズに対応して,日本料理店が利用されていることが明らかになった。また,現在の中国人観光客は日本旅行中の食事に対して「日本らしさ」を最も求めていることが明らかになった。ただし,中国人観光客にとっての日本料理は必ずしも伝統的な和食ではなく,ラーメンや焼肉も日本の食の一つとして認識されている。また,団体観光客の自由食は様々な制約のもとで選択されており,まったく自由に食事場所が決められているわけではない。中国人観光客に飲食物を提供する際,こうした実態と日本側の価値観との相違に留意する必要がある。