2022 年 2022 巻 135 号 p. 1-14
貿易自由化による輸入拡大が懸念される品目の一つが,植物油である。本稿では,油糧作物や植物油,植物油粕の商品特性や社会的技術条件を整理し,今後の植物油輸入拡大の誘因と障壁を整理する。その上で,中長期的に起こり得る植物油輸入等の近年の環境変化に対して,植物油製造業がどのような方策で競争優位の維持,獲得へ取り組んでいるかを,経営戦略論の知見から捉えたい。 結論では,近年の環境変化として,貿易自由化に伴う植物油輸入は国内での搾油の利益がより大きく,また保管用のタンクが十分でないためすぐには起こりにくい一方,植物油粕の需要者である畜産部門の推移が注視すべき分野の一つである点を整理した。また,原料の安定調達が喫緊の課題である点を確認した。その上で植物油製造業は,産業内の協調的な競争関係の構築や,構造改革,高付加価値油の需要創出,多角化,海外展開,植物油輸入へ対応可能な設備投資に取り組んでいた。