農村研究
Online ISSN : 2436-9047
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第三者の仲介者を置くCSA における運営のありかたと産消間の関係の近接性に関する一考察
高梨子 文恵吉野 馨子
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2023 年 2023 巻 137 号 p. 11-19

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抄録
本研究では,第三者の仲介者が存在する 3 つの CSA に野菜を提供している H 農園(東京都)を調査し,H 農園が提供する CSA(Community Supported Agriculture)の仕組みと,会員間の関係の近接性を明らかにした。調査結果によると,CSA の地理的な近接,取引期間,消費者の農作業負担などは,一般的な CSA と異なっており,生産者消費者双方にとって調整しやすいように変更されていた。また,仲介者は①会員の募集と活動周知活動,②事務手続きの代行(代金回収等),③ピックアップポイントの提供,④消費者側から生産者に対する意見の集約,などを行っており,これらの 機能を仲介者が負担することで,生産者・消費者の負担が大幅に軽減されていることが明らかになった。一方で,第三者が間に入ることにより,生産者と消費者,消費者間の直接的な関係性は,生産者が企画するイベントを介して行われるのみになっており,運営への消費者の関与は非常に限定的であった。今後は運営に参画する消費者層の育成が非常に重要になると考えられる。
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© 2023 食料・農業・農村経済学会
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