2019 年 10 巻 1 号 p. 3-13
森・川・海のつながりの中でも,腐植物質の鉄輸送が海洋生態系に重要な意味を持つことが指摘され,その分子構造や流出する流域の植生および土地利用に着目した研究が行われている。本研究では,未だ明らかになっていない落葉広葉樹とアカマツ,スギの落葉,マアジを起源とした腐植物質を対象とした鉄イオン溶出実験と,河口域を想定した鉄イオン保存実験を行い,鉄イオン濃度,Fe2+濃度,PH,COD,DO の経時的変化を計測した。計測の結果,得られた計測値は起源ごとに異なった特性を示すことが示唆された。落葉広葉樹の落葉は有機物を同質量のスギ落葉の2 倍以上水中に供給しており,多くの腐植物質を供給し,鉄イオンを沿岸部まで輸送することが推測された。スギを起源とする腐植物質は今回の資料の中では落葉広葉樹起源に次ぐ鉄イオン輸送能をもち,塩分10mg/L において鉄イオンの残存率は10%と,比較的除去されにくい傾向を示した。マアジ起源の試料に関しては腐植物質以外の要因が支配的で他の試料と異なる傾向を示した可能性があり,条件を変えて再度分析する必要がある。今後,さらに腐植物質の起源に着目し,鉄イオン輸送能に加えて生物利用性も含めて定量的に検討する詳細な研究が必要である。