理論と方法
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特集 社会学における理論と方法
「社会の階層構造が与える心理的影響」研究をめぐる理論と方法
和田 修一
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1986 年 1 巻 1 号 p. 41-56

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抄録

 地位の不一致・移動効果に関する従来の研究の中で用いられてきた理論と計量モデルの構造を批判的に検討することによって、ひとびとの態度や行動にたいする社会構造の影響分析のしかるべき理論と実証方法について検討した。構造機能概念における社会システムと個人の心理システムは、まったく次元を異にするシステムであり、これらの間の連関関係をモデル化するためには、それらを仲介するメカニズムの存在をパラメータとしてモデルに組み入れ、かつその存在を何等かの手段で証明することが必要である。従来の研究では(ある一部の研究を除いて)、この点の理論的構造を明確にすることなしに、単に計量モデルの改良に腐心してきた嫌いがあるが、地位の不一致効果にしろ移動効果の場合にしろ、それらの事象の本質は一方において社会的地位のバランスや変化という事柄であり、他方においては心理的な要素間のバランスというメカニズムという異質のメカニズムが因果的な関係性において結び付いている点に求められるのであり、したがって社会的地位の形状や変化と態度・行動レベルでの帰結を内生変数とするシステムを当該分析対象とするならば、特定の心理的プロセスをそのシステムの外生変数とする分析枠を設定しなければならない。このパラメータとなる心理的プロセスが具体的にどのような構造と機能を持つものであるかは、注目している人々の態度や行動様式がいかなる性質を有するものであるかによって相対的に決定される。したがって、状況や該当者のパーソナリティ特性などの限定抜きに、地位の不一致や移動の効果を議論することは意味のあることではない。

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© 1986 数理社会学会
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