理論と方法
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特集 ゲーム理論の可能性
代議員制度と投票者の影響力
―ゲーム理論による分析―
武藤 滋夫大西 匡光小野 理恵
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1995 年 10 巻 2 号 p. 147-163

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抄録
 本論文では、代議員制度において、各選挙区の投票者が代議員の選出を通して議会での決定にどれだけの影響力をもちうるかを、特に2政党制の場合に議論をしぼり、シャープレイ・シュービック(SS)指数によって分析する。ます、伝統的な投票ゲームによる定式化においてはSS指数は必ずしもわれわれの直観にそぐわない結論を導くという、既知の結果を振り返る。ついで、その原因が投票ゲーム表現の不十分さにあることを指摘した上で、投票者のグループのパワーを彼らが当選させうる代議員の数によって与えるような新たなゲーム表現を与え、その下では、各投票者のSS指数は、その投票者の属する選挙区の代議員定数をその区の投票者数で割った、いわゆる「1票の重み」に一致すること、さらに、いくつかの選挙区をまとめたブロック別の比例代表区を並立する場合には、各投票者のSS指数は、その投票者の属する選挙区における1票の重みとその選挙区が属するブロックにおける1票の重みとを加えたものとなること、を示す。最後に、衆議院議員選挙の新制度、参議院議員制度における各選挙区の投票者の影響力について、修正されたゲーム表現とその下でのSS指数を用いて評価した結果を与える。なお、SS指数と並んでよく用いられるバンザフ指数は、投票ゲームによる定式化、修正されたゲーム表現の双方において、直観にそぐわない結果を導くことを本論文の最後に付録として与える。
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© 1995 数理社会学会
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