理論と方法
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特集 社会学における進化論的アプローチの可能性
近所付き合いは社会的相互作用の進化にどのように影響するか
中丸 麻由子松田 裕之巌佐 庸
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1998 年 12 巻 2 号 p. 149-162

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抄録
 人間はときとして、利他行動やスパイト行動など、短期的にせよ自分自身が損をする行動をとることが知られているが、合理性の仮定からは説明が困難と考えられてきた。しかし、進化ゲームにもとづいた最近の研究によってそれらの社会的相互作用の成立が説明されるようになってきた。その基礎には、遺伝子が競合する結果としておきる生物進化とのアナロジーで人間社会である雰囲気が成立する動態を追跡するという考え方がある。ことに人間の交際範囲がある程度限られていると、ランダムな相互作用の場合とは大きく異なる結果となることが知られるようになった。本論文では、著者らの研究も交えながら相互作用が局所的に生じる(空間構造がある)場合を単純化して表す格子モデルでの社会的相互作用進化の研究を紹介する。格子モデルは進化生物学でも最近よく用いられるが、解析方法はコンピューターシュミレーションに限られてきた。著者らはそれに加えて、出生死亡過程や独自に開発した近似解析法(ペア近似、ペアエッジ法)によっても解析をすすめた。
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© 1998 数理社会学会
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