1999 年 13 巻 2 号 p. 169-182
本稿の目的は、一部の人々が利他的な動機から協力行為を採り、それ以外の人々が利己的な動機から裏切り行為を採るような社会構造が導かれるメカニズムを解明することである。本稿では、進化ゲームモデルを用いて、次のような諸命題を明らかにした。1)ゲームの継続確率が低い状態でプレイヤーが利得関数を選択できると仮定したとき、ある一定の割合で利他的な動機から協力行為を採るプレイヤーが必ず現れ、その状態で安定する。2)その場合、利己的な個人は、利他的な個人を搾取している。以上の結果から、利己的な個人が利他的な個人の協力行為にただ乗りする権力構造が、行為者間の制約のない相互行為から産出されうることが結論される。