理論と方法
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特集II 社会学と数理的視座
階層と経済発展
―結果の平等、機会の平等および効率―
与謝野 有紀
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2000 年 15 巻 2 号 p. 313-330

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抄録
 本稿では、「結果の平等」がどのような状態のときに、もっとも経済発展しやすいかをまず問題としている。この目的のために、Nelsonの「低水準均衡の罠」のモデルを概観し、そこでの帰結が、結果の平等―不平等とどのような関連性を持つかを数理的に解析する。数理解析にあたっては、個人の所得―投資曲線の期待値として、平均所得―平均投資曲線を考え、その形状の変化を不平等度との関連で考えている。結果として次の2つの命題が明らかとなった。1.任意の所得―投資曲線について、どのような所得分布をかんがえても、平等な状態において平均所得に対する平均投資はもっとも少ない。2.パレート分布を考えた場合、任意の所得-投資曲線について、不平等であるほど平均投資が増える。また、より一般的に投入―産出曲線を考えた場合、その形状にしたがって、これらの命題に対応する結論が異なることが明らかとなった。
 さらに、「機会の平等」が投入―産出曲線の形状の変化と結びつきうることを議論し、「機会の平等」、「結果の平等」、「効率」の3者の連関パターンの整理をおこなった。
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© 2000 数理社会学会
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