2000 年 15 巻 2 号 p. 359-374
女性のアスピレーション(教育アスピレーション、職業アスピレーション、就業キャリア希望)形成に関しては、「性役割の内面化がアスピレーションを形成する」という主張がなされてきた。しかし、この主張は操作的なモデル構築においても、実証的な分析技法においても不十分な点が多い。本稿ではこれらの問題点を整理した上で、高校生女子のアスピレーションの規定要因について、多項ロジットモデルを用いた分析を行う。分析の結果、教育アスピレーションは学校および家庭要因に規定され、性役割意識には影響されないことが明らかになった。このことは、先行研究に見られた性役割意識とアスピレーションの間の効果が、疑似相関である可能性を示唆するものである。ただし、就業キャリア希望に関しては性役割意識は有意な効果を持っていた。これらの結果は、「性役割の内面化がアスピレーションを形成する」というモデルの再検討を示唆するものである。