理論と方法
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特集 社会学におけるクラスター分析と多次元尺度構成法
「過去の職業」による老後の所得格差
木村 好美
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2002 年 17 巻 2 号 p. 151-165

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抄録

 本稿は、過去の主な職業による老後の所得格差について検討を行った。60歳以上の「過去に就業経験があり、現在無職」である男性サンプルについて、「過去の主な職業」と老後の所得の関連を年齢層ごとにみた結果、専門職・大企業ホワイトのすべての年齢層、中小企業ホワイトおよび大企業ブルー、自営業ホワイトの一部の年齢層において平均年間所得が300万円以上の高所得層が存在すること、自営業ブルー・農業はおしなべて低所得であることが確認され、職業的地位により、老後の所得が大きく異なることが明らかになった。さらにMDPREFを用いた分析では、専門職・大企業ホワイト・大企業ブルーが近くに位置づけられ、これに60-64歳における大企業ブルーの所得上昇、70-74歳以外では中小企業ホワイトよりも大企業ブルーの所得が高いという知見を併せると、ブルー・ホワイトという職種の差を超えた、中小企業に対する大企業の優位性が示唆されたと考えられる。

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© 2002 数理社会学会
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