理論と方法
Online ISSN : 1881-6495
Print ISSN : 0913-1442
ISSN-L : 0913-1442
原著論文
認識の効率性と階層イメージ
―スキャニング打ち切り条件を課したFKモデル―
石田 淳
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 18 巻 2 号 p. 211-228

詳細
抄録

 階層イメージならびに階層帰属意識にかんするFKモデルは,「中」意識肥大現象などの人々の階層イメージ,階層帰属意識の傾向性を見事に説明している.しかしながら,FKモデルは同一客観階層内での階層帰属意識のばらつきをうまく説明することができない.本稿は,FKモデルに新たな公理を加えた修正モデルを提唱する.新たな公理は,スキャニング・プロセスの打ち切り条件を定めるものであり,行為者の階層イメージ形成過程において,他者の階層的地位の認識にかかるコストを軽減するための「認識の効率性」を仮定したものである.この修正モデルによって,同一客観階層内での階層帰属意識のばらつきが表現されるとともに,経験的データとの適合性も改善される.また,認識の効率化によって生じる意図せざる結果としての「格上げバイアス傾向」が生じる条件も修正モデルによって明らかになる.

著者関連情報
© 2003 数理社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top