理論と方法
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特集 数理社会学の発展とその課題
経験主義から規範科学へ
数理社会学はなんの役に立つか
盛山 和夫
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2006 年 21 巻 2 号 p. 199-214

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抄録

数理社会学は何の役に立つのか。経済学と比べると、社会学において数理の役割は依然として小さい。ここには、社会学という学問の特性が関わっており、数理社会学の意義はそれを踏まえて再定義される必要がある。そもそも、社会学が探究すべき社会秩序は、パーソンズが主張したように単なる事実的秩序ではなくて規範的秩序である。ただし、パーソンズの述べた理由によってではなく、社会的世界が人々にとって先験的な意味世界として構成されているからだ。規範的に秩序づけられている社会的世界を探究するのは「解釈」という営みであり、それは純粋には経験主義的ではありえない。なぜなら、「意味」は外的世界にモノとして存在するのではないからである。解釈による探究は、基本的に対象としてある意味世界に対して、新しい意味世界を重ね書きするような営みであり、それは新しい秩序構想の提示に等しい。この意味で、社会学は規範科学であり、数理社会学の意義も、経験的説明としてよりはむしろ規範的構想のための可能性の論理的探究にあるといえる。

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© 2006 数理社会学会
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