2008 年 23 巻 2 号 p. 2_65-2_83
日本における世代間移動の出身―到達機会格差について、独自の階層的地位として扱われてこなかった非正規雇用と無職を含む階層分類をもちいて、女性に焦点をあてながら性別比較をおこなった。この性別比較では、第1に出身―到達格差に男女間の明瞭な相違があるのか、第2に、多くの既存研究で時代的変化がないとされてきた男性と同様に、女性の機会格差にも時代的変化がないといえるかを検討課題とした。仮説的な議論として、前者については女性の出身―到達格差が男性より小さいことが予想されたが、後者の変化については格差の安定的持続、拡大、減少の3通りを予測することができた。2005年SSM調査の職歴データを活用して分析した結果、女性の出身―到達格差は、とくに38歳以降そして最大格差で、男性よりも小さく予測に合致した。また非移動については、男性では時代的変化がなかったが、女性では暦年にともなう変化が確認された。しかしその暦年変化は、階層によって安定的持続、増大および減少の趨勢そして増減の曲線的変化などがみられ、3つの変化予測のいずれとも一致しなかった。