理論と方法
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特集 主観的ウェル・ビーイングへの社会学アプローチ
サポートネットワークの有効性に対する社会階層の効果:
ネットワークと自由の分析
内藤 準
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2017 年 32 巻 1 号 p. 64-79

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抄録

 社会階層研究において,社会的資源は人びとのライフチャンス,選択の自由を拡大するものだとされる.他方,社会的ネットワーク研究では,社会的サポートネットワークが行為者にとっての社会関係的資源になるとされてきた.そこで本稿では,サポートネットワークが人びとに自由を与える資源となるための条件と,社会階層との関わりを検討する.分析は「主観的自由」とサポートネットワークの指標を使用しておこなう.主観的自由は,行為者の選択の自由に関する自己評定指標であり,主観的ウェルビーイングの一つとしても解釈できる.全国調査データ(SSP2015)を用いた分析の結果,以下のことが明らかになった.①サポートネットワークは,行為者に「生き方を自由に選べる」といえる状況をもたらす資源として機能する.②しかし,サポートネットワークが自由をもたらす効果は,個人収入が少ない層では大幅に低下する.この結果は,サポートネットワークを利用するには「他者の協力」が必要であるが,他者とのサポート関係が「相互性に基づく交換」に基づくため,低収入層はそれを利用しづらいという,社会的相互行為のメカニズムによって理論的に説明できる.それゆえ,サポートネットワークが社会的排除に対する実効的な安全網となるには,社会経済的資源の適切な再分配が必要であると示唆される.

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© 2017 数理社会学会
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