Organ Biology
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幹細胞から分化誘導された機能的肝細胞の特性と利用
幹細胞分化肝細胞が満たすべき要件
中村 直子絵野沢 伸梅澤 明弘
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2014 年 21 巻 1 号 p. 33-41

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抄録

肝臓は代謝臓器として糖新生,解毒,血漿蛋白の合成など多様な役割を担っている.重篤な肝疾患に対する根治治療として肝移植が行われるが,ドナー不足という問題がある.また,創薬研究では候補化合物の肝臓における代謝経路の同定や代謝産物の毒性評価が必須である.薬物代謝能は種差が大きく,ヒトの肝細胞を用いた実験が必要となるが,良好な初代肝細胞を安定的に得ることは困難である.このような背景から,近年,幹細胞分化肝細胞が注目されている.ES 細胞(胚性幹細胞)やiPS 細胞(人工多能性幹細胞)は,無限ともいえる自己複製能があることから,細胞治療,再生医療や創薬研究で使用する肝細胞ソースとして期待されている.すなわち,多能性幹細胞から肝細胞を作製することで,肝疾患への細胞移植療法や創薬における薬物動態毒性評価に有用な細胞を安定的に得ようとするものである.しかしながら,幹細胞から分化させた肝細胞の定義は明確ではない.そこで,多能性幹細胞からの肝細胞分化研究を俯瞰し,分化肝細胞が有すべき条件について述べる.

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© 2014 日本臓器保存生物医学会
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