2025 年 32 巻 2 号 p. 093-098
腎臓は薬剤の影響を受けやすい臓器である.その理由として,1)腎臓には心拍出量の25%の血流が流れており,腎臓に運ばれる薬剤量が多い,2)エネルギー要求量が高く相対的な低酸素状態にある,3)尿細管上皮は尿中・血中両方から再吸収を行うため薬剤を取り込みやすい,4)尿の濃縮により薬剤濃度が上昇する,などが挙げられる.本邦の薬剤性急性腎障害の特徴として,高齢者に多く,約20%もの症例が不可逆的変化を生じたという報告がある.原因薬剤としては,抗生剤,鎮痛剤,抗癌剤,RAS系阻害剤,利尿剤が上位を占める.薬剤性腎障害の発症機序は大きく以下の4つに分けられる.中毒型,免疫学的機序,間接毒性,尿路閉塞である.これらの機序をもとに多彩な病型を示す.急性尿細管壊死や急性間質性尿細管腎炎,ネフローゼ症候群,血栓性微小血栓症,円柱腎症などがこれに当たる.これらを鑑別するためには腎生検による病理的な評価が重要な役割を持つことも多い.移植医療において免疫抑制療法で中核をなすカルシニューリン阻害剤(CNI)が腎毒性を有することは周知の事実である.CNIの腎毒性と言っても投与期間や障害部位によって障害のパターンが異なるため,ここでも病理診断がその役割を発揮する.そこで,本稿では薬剤性腎障害全般および腎臓領域で注目を集めている薬剤について病理学的な観点から解説を行いたい.