抄録
無症候性頸動脈プラークにおけるハイリスクな脆弱プラークの特定は,脳卒中予防の重要な臨床課題
である.本研究は,この課題に対し,機械学習を用いた2つの異なる予測対象を持つアプローチ,すなわ
ち脳梗塞発症モデルと,治療適応モデルを構築し,その有用性を比較・評価する.
旧姫路循環器病センターで取得した無症候性頸動脈狭窄症患者18名のマルチモーダルMRI(3D TSE,
TOF)Radiomics特徴と臨床特徴の統合データセットを使用した.患者レベルのラベル(症候性7名・無症
候性11名)を用いて脳梗塞発症モデルを,動脈レベルのラベル(外科的介入13本・経過観察23本)を用い
て治療適応モデルを構築した.特徴選択にはそれぞれSFSと相互情報量(MI)を用いた.
脳梗塞発症予測では,ロジスティック回帰が最高性能(AUC 0.909)を示し,特に高い再現率(0.857)を
達成した.これは,将来脳卒中を発症するハイリスク患者の識別に有効であることを示唆する.一方,治療
適応予測では,ランダムフォレストが最も高い性能(AUC 0.933)を示した.
脳梗塞発症モデルは「脳梗塞」という直接的かつ重大な臨床転帰の予測に優れる.対照的に,治療適
応モデルはプラークの進行なども考慮した医師の複雑な臨床的推論プロセスのモデル化に優れていた.
本研究の新規性は,これら2つのアプローチが相互排他的ではなく相補的であり,無症候性患者の個別
化医療の精度を向上させる可能性を秘めていることを明らかにした点にある.